最愛のあなたと【2j3j】【knmc】 (ページ10)

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◇10.母ページ10

雪のように埃の積もった
私の小屋に日が差し込んできた。

…そろそろ仕事の時間だ。
身支度をしないと。

ベットから起き上がり、
目の前のクモの巣がかかった
全身鏡をみる。

(なつかしいな)

私が昔着ていた黒い拘束着。

腕は前に、
手と口は布で覆われ、拘束されている。

全身が縛られる感覚が
身体を支配している。

私はこういう立場の人間なんだ。

…この拘束だって、
本当は意味のないもの。

目を瞑って、強く念じる。

(この拘束が解けますように)

…それだけであっけなく
拘束着が床に落ちた。

鏡にはさっきとは正反対の
白いワンピースを着た私が映っている。

(こうやって見ると、
普通の…何の力も持たない
女の子なのに。)

…お母さん。

本当は普通の娘のように
お母さんと呼びたい。

母は仕事のとき以外
私の名を呼んでくれない。

(線引きされてるんだ。、)

母娘であることを実感すると、
つらくなるから。

…本当は村の人達に
利用されるか、
殺されるかだった私を、
拘束着を着せ、支配下に置くことで
母は私を守ってくれている。

だから私は母に従う。

そう決めている。

母が私を
守ろうとしてくれているから、

私は母を守ろう。
母だけは守ろう。

普通の母娘ではないけど。
これは紛れもなく母からの愛なんだ。

…そう、思いたい。