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◆5.正気？ ページ5
…刀也さんが帰ってきたのは、
月が高く昇った頃だった。
あの女性の瞳のように、
空は黒く暗く染められている。
もう、別の色で染めることは
できないほどに。
(ああ、やだな…)
…もうぜんぶ終わりにしたい。
気が気じゃなかった。
まともに脳が動いてくれなかった。
もう、私の脳は
『彼に私の痕を遺す』
ことしか考えられなかった。
永遠を生きる彼に、
永遠に私がつけた傷痕が刻まれる。
それしか、私の想いの
証明方法は無いと思えた。
今日は役立たずの私の異能が役に立つ日だ。
「刀也さん…」
ふらついた足取りで
彼の部屋へ向かった。
──歯車が、きしんだ。
ぱらぱらと、欠ける。
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作者名：継森 | 作成日時：2023年12月13日 23時
