◇23. おかあさん ページ30
母はとぎれとぎれに
懺悔のような告白した。
母「…やっと、言えたわ。
死に際じゃないと
素直になれないなんて馬鹿みたいね。
…馬鹿だからこんな方法でしか
あなたを守れなかったし…守りきれなかった。
ねぇ、A。許してなんて言わない。
一生恨んでいいわ、
私のことを母と思わなくていい。
…ただ、さいごにおねがいよ。
一生のおねがい、これだけはかなえて」
かすれた声で母は言葉を紡ぐ。
母「嘘でいいの。
……“おかあさん”って言って」
…なんで。
なんで「呪いを解いて」と言わないの？
私が自分でマスクを外せないと知ってるでしょう？
このマスクを外してくれないと、
私の言葉はただの何の役にもたたない
音になるだけなんだよ。
治してといってよ、この封じを解いてよ。
そしたら私、きっと治すのに。
…恨んだことなんてない、
と言ったら嘘になる。
それでも私、嫌いになったことなんてない。
嫌いになれなかった。
どうしたって、
隣国で過ごした頃の記憶が忘れられなくて
ときどき見える面影にすがり付いてばかりで。
──私…
「…おかあさんのこと、大好きだよ」
おかあさん。
笑った顔が好きだった。
繋いだ手の温かさも覚えてる。
ずっと、ずっと大好きだったよ。
ぼんやりとしたお母さんの瞳が見開かれた。
そして優しく細められる。
母「…そう、やさしいうそね。
わたしも大好きよ。
生まれてきてくれてありがとう
わたしの最愛のA。
しあわせにできなくて、ごめんなさい」
お母さんの震える指先が私の頬に触れ、
マスクが床に落ちる。
「…ｯ、おかあ…さん…？」
母「…どうか…じゆうに、
しあわせに…………」
母の手が重力のままに落ち、力なく揺れた。
あまりにも呆気なく母の終わりは訪れた。
高みの見物をするかのように
しばらく黒い霧が頭上を漂い続け、
嘲笑うように母の亡骸とともに消えた。
黒い霧は遺体までも奪って行った。
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作者から
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🎉お気に入り120人突破しました🎉
たくさんの方々に読んでいただいたおかげです。
拙い文章にはなりますが、これからもたくさんの方に読んでいただけるとうれしいです。
今は不穏な展開が続き、2j3jと言っておきながらなかなか登場していない状況ですが、もう少しです。もしかしたら追加メンバーが登場するかもしれません。
よろしくお願いします。
継森
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作者名：継森 | 作成日時：2023年12月13日 23時
