最愛のあなたと【2j3j】【knmc】 (ページ27)

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◇21. 母と私ページ27

母が倒れた。

浅く息をする母をなんとか家の中に運び、
ベッドに寝かせたがずっとうなされている。

数年ぶりに入った母だけが住んでいる家は応接間のような客を通す場所だけが飾り付けられ、他は私の小屋と変わらないほど廃れていた。

(どうして…？)

何もかもがわからない。

母が倒れた理由も、お金があるはずなのに質素な生活をしている理由も、全部わからない。

繰り返しの前の母はずっと元気だった。

化け物と呼ばれる特殊な異能を持つ私を引きとりに刀也さんが来るまでずっと。

(…じゃあ、これは繰り返しのせいなの？)

母「……ｺﾞﾎｯ」

母が咳き込んだ。
すると、部屋に黒煙が広がる。

火事かと思いとっさにむき出しのままの口を覆うが、煙はずっと母の喉元あたりを漂っている。

火事の煙なら天井に向かって上っていくはずだ。

もしかして、これは…

(呪いの霧……!)

　
ガクさんや刀也さんを襲った
呪いの黒い霧が母の体を包み込んでいる。

この世に存在するどんな黒よりも重く、
よどんだ黒が母の肌を覆い隠している。

どうしよう。

私は、連日異能を使いすぎている。

異能を使った仕事をしているからといって、
ここまで連日大きな異能を使ったことはない。

ここまで強い呪いを
浄化する力は私には……もうない。

急に視界に何かが映ると同時に
私の口をマスクが覆った。

母「……異能は使わないで、A」

突然聞き間違えかと思うほど弱々しく、
何度も夢に見た声が脳に響いた。

起き上がる力も無いのか
母は寝たままこちらをじっと見る。

母「さいごにお話しましょ……座って」

母の真っ白な唇はかすかに震えていた。