◇20. 私の帰る場所※やや流血 ページ26
目が覚めると、大きな部屋の
ベッドで寝かされていた。
少し頭がぼうっとする。
(でも、早く帰らなきゃ)
母は私が脱走したと思うかもしれないし、
何より…刀也さんに合わせる顔がない。
刀也さんに会うのが怖い。
刀也さんには元気で、幸せでいてほしい。
だから、刀也さんの不幸を
願ってしまったような化け物は
もう二度と傍にいってはいけないんだ。
なのに、刀也さんの傍にいたいなんて
思ってしまう私を許してほしい。
すぐに立ち去るから。
ずっと気持ちに蓋をするから。
(……！)
隣の…刀也さんのいた部屋から声がする。
きっと目覚めたのだろう。
(早く帰ろう)
部屋を見渡して都合のいい突起を探す。
(あった。)
壁のフックに耳もとを近づけ、
マスクの紐を引っかけ外す。
喉に直接冷たい空気が流れ込んでくる。
(…あ、これいいかも)
小さなタンスの影に刺繍針が落ちていた。
ちょっとお借りしよう。
ぼろぼろの布切れのような
自分のワンピースの内側の生地を少し破る。
紙のように薄いうえに傷んでいるから
手で簡単にちぎれた。
乾燥した指先を針で刺す。
ぷくんと赤い液体が溢れ、痛い。
ワンピースの切れ端に血で手紙を書いた。
どうせ異能で治せるのだから、
物騒かもしれないけど一番手頃なペンだ。
「……いたいのいたいのとんでいけ」
子供騙しなおまじないだと思う。
でも、そう口に出せば
私の指先の血は止まり痛みはなくなった。
……会えて嬉しかったよ、ガクさん…刀也さん。
どうか元気でいてね。
幸せに過ごしてね。
「…無事に家に着けますように」
◇◇◇ ◇◇◇
母「Aーｯ…？！」
異能を使って小屋に戻ると、
母の声が聞こえた。
小屋の中に移動したため、
ドアを少し開け外の様子を見る。
母が私の名前を呼びながら走り回ってた。
それは、
見たことがないくらい必死な顔で。
見たことがある、辛そうな顔だった。
母「ハァ……Aｯ……ﾋｭｯ………」
…なんだか様子がおかしい。
そう、思ったときには母が倒れていた。
「お母さんｯ……！！」
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作者名：継森 | 作成日時：2023年12月13日 23時
