最愛のあなたと【2j3j】【knmc】 (ページ11)

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◇11. かんたんなお仕事ページ11

小屋から出ると
母が立っていた。

「今日はこの人の左足を治すのよ。
…余計なことは口に出さないように。」

母の隣には杖をついている
貴族風のおじいさんがいた。

口を覆っているマスクを外される。

冷たい風が頬を撫でる。
喉がすうっと冷えていく。

私の仕事は……
能力は、願いを口に出すだけ。

それ以上でもそれ以下でもない。

ただ、──その願いが
必ず叶ってしまうだけ。

「───貴方の左足が
元気になりますように。」

音も光も何も…
特別なことは起きない。

ただ、一言呟いただけの私を見て、
おじいさんがまばたきをした。

きっとその間に
足は良くなっているだろう。

「あ、足が…？」

おじいさんの手から杖が離れたが
安定して立てている。

「あぁ…ありがとう！
まさかこの傷が治るとは…
お嬢さんいったい君は、」

「…今日の仕事は終わりよ。
戻りなさい、A」

おじいさんが感謝を述べながら
こちらに近づいてきたが、
母が私にマスクを付け、
仕事の終わりを告げた。

私は黙って会釈をして
急ぎ足で小屋に戻った。