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「拓朗〜!そこにいたんか!」
「っ……」
名前を呼ばれても、身体も顔も向けられない。
きっと今、酷い顔をしているから。
「拓朗?水やで?具合悪いんか?大丈夫か?」
山下が川上の強ばった背中をさする。
顔は無理に見ようとはしなかった。
「無理に走らせたせいかな……ごめんな」
申し訳なさそうな声。
背中をゆっくりと往復する、熱い掌。
「……A」
「ん?」
「俺、なんか、変……」
声が震えている。
自分でも何なのか分からない感情。
戸惑い。
恐怖。
落し物を抱える手が震えている。
早く渡さなければ。
「大丈夫か?はよ家行こか。いや、帰らせた方がいいんか……?」
「……Aの家がいい……」
自分でも何を言っているか分からなかった。
「ええよ、行こか?」
それでも山下は、優しい声で、手で、しっかりと背中を支えてくれていた。
涙が出そうだった。
「拓朗がよければ家で聞かしてや〜」
「……ええよ」
からからと明るい声で笑う山下は、やっぱり太陽だと思った。
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作者名:夏みかん | 作成日時:2020年6月9日 20時