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「向こう行こうか」
手を引かれ、ゆっくりと人混みから抜けていく。
人気のない木陰に座ると、肌寒さが際立つ。
彼……蒼井は、惜しむようにキャンパスを眺めていた。
「…………俺ね」
「……うん」
「……番号、書かなかったんだ」
「……え……?」
耳を疑った。
番号の書き忘れ何て初歩的なミス、蒼井がするわけがない。
「……書き、忘れ?」
「ううん、わざと」
頭を殴られたような衝撃。
声が出ない。
「……俺さ、余命、後1週間何だ」
「……」
__……知ってるよ
ぴくりとも動けない代わりに、心の中で呟く。
そんな事を知ってか知らずか、蒼井はキャンパスを見つめながら続ける。
「東大受かっても、入学式も出れずにすぐに死んじゃうの。それじゃ意味ないし、受けた皆に申し訳ないから」
優しさが、痛い。
謙虚さが、悲しい。
「お前と一緒にいれないのは嫌だけど、しょうがない事だから」
"しょうがない"
病気になってからの蒼井の口癖。
生きる事を諦めているようで、Aはその言葉が嫌いだった。
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作者名:夏みかん | 作成日時:2020年5月30日 12時