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足は早過ぎず、遅すぎない。
コツコツと黒の革靴を鳴らす。ネオンライトに照らされたアメジストは深澤自身のように怪しげで怖い。
「言うこと聞けない奴、俺嫌いなんですよね」
「……ごめんなさい」
九割近く佐久間のせいなのだが、決して彼のせいだけにしないのがこのお嬢だ。
何より、まっすぐ前だけを見て言い放った深澤が怖い。
「まぁじで、百合組も佐久間もみ〜んな甘やかしすぎ。俺はそうはいかないから」
「べつに、だいじょうぶ」
絞り出すようにお嬢は言う。
落とされないようにしがみついているが、今すぐにでもこのシャツから手を離して、身体の震えを止めたい。
「あぁ、そうですか、好都合です」
口角だけ嬉しそうに上げた。目は笑ってない。
「……ふかざわ、ラウに会った？」
「いやぁ？若頭補佐は名ばかりですから。
ただね、アイツ相当気落ちしてるよ、お嬢のせいで」
「うん、しってた」
敬語が外れた深澤。
これは、組長である岩本も深澤と長い付き合いの佐久間も、百合組でさえも知らない彼の姿。
「お嬢は大人しくしてりゃいいって言ってんでしょ〜？」
羽が生えてどこかへ飛んでいってしまいそうなくらい軽い口調。言葉にどこか裏のありそうな軽薄な笑み。
「…してるよ」
「あぁ〜そうですかぁ。最近、やたら干渉するようになったのは気の所為？」
「……無知なのはよくないってふかざわが言った」
甘ったるい声はお嬢の小さな身体にベタりとまとわりつく。
「……ん〜、そんなこと言ったっけ？」
光のない真っ黒な瞳が初めてお嬢を捉えた。
ワントーン下がった声が周りの空気を数度冷やした。
「……大事なことは忘れて、他人の過去には干渉。岩本サンに執着されなきゃ野垂れ死にの都合のいい頭だろ？」
漆黒の中にお嬢を映したまま、唇が微かに動く。
吐き出した音は小さすぎた。
「…なに？」
「何にも？」
声は元の調子に戻っていた。
「ふかざわ」
「何ですかぁ？」
「……きらい」
「お互いさまだよねぇ」
深澤の言葉を最後に二人は言葉を交わさなかった。
そのまま、刺青のない真っ白な細い首につかまって、屋敷まで静かに帰った。
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霞(プロフ) - takkimakkiさん» 嬉しいコメントありがとうございます！これからも素敵な百合組お届けできるように頑張ります！ (2023年1月2日 23時) (
レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
霞(プロフ) - まなみんさん» コメントありがとうございます！励みになります( ¨̮ ) (2023年1月2日 23時) (レス) @page30 id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
takkimakki(プロフ) - すごく好きなお話です。ころからも楽しみにしています！！百合組、素敵です。 (2022年12月29日 10時) (レス) @page34 id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
まなみん(プロフ) - 続きが気になります！無理せず更新頑張って下さい！ (2022年12月11日 8時) (レス) id: 5b5d40fc7f (このIDを非表示/違反報告)
霞(プロフ) - 雪姫さん» ありがとうございます！マイペースですが、更新頑張ります。 (2022年12月5日 0時) (レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霞 | 作成日時：2022年11月30日 1時
