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純粋無垢な少年の目から涙が零れて落ちてきそう。
だが、そう見えるだけで実際瞳に水滴は溜まっていない。溢れてしまうのを無意識に止めているのが手に取るようにわかる。
「……なんで？」
「Aお嬢っ」
耐えきれなくなった阿部は焦ったように名を呼ぶ。
それを無視してお嬢は続ける。
「なんで悲しいのに泣かないの」
「……なんでだろ、僕分かんないや」
道化の仮面が剥がれ落ちたように、力なく笑う。
「Aもね、涙でないよ」
「……Aちゃん僕から見たら泣き虫だよ」
羨ましそうに言う。
「A、本当にかなしいと涙でない。痛い時も怖い時もは涙が止まらないのに、かなしいだけはだめ」
不意をつかれたように、その言葉を聞いてラウールは唇を軽く噛んだ。自分がひどく悲しんでいることに改めて気付かされたのだ。
長い沈黙が調理場を包む。
阿部も向井も大人たちは未成年の、その共感の境界線に踏み込めはしなかった。
鍋が沸騰しだして、向井が慌てて火を止める。
向井が再び台所に向き合ったのを合図にしたかのように、ラウールは口を開く。
「蓮くんね、ずっと僕を守ってくれてたの。だけど僕は蓮くんを知らなすぎた。僕の無知が蓮くんを追い詰めた。僕のせいで蓮くんはあぁなっちゃった。
だから蓮くんは、嫌いになっちゃったんだ、
＿＿＿＿＿＿何もかも全部、僕のせいで」
「っラウールそれは違うって何度も「阿部ちゃんには分からないよ、たとえそうじゃなくても僕が傷つけたことは事実だから」
フォローを入れた阿部の言葉を遮る。
「こーじ」
「…なんや？お嬢」
「ごはん、Aのお部屋にもってきて」
小柄な身体を器用に使って椅子からひょいと降りる。
「Aお嬢？」
「べべのまねっこする」
次は困惑した声で名を呼んだ阿部に一言だけそう告げると、放心状態に近いラウールの手を引いた。
「……なぁに」
「かうんせりんぐ、する」
「Aちゃんがするの？」
「うん、べべはお休みなの。お話ししなくてもいいから、Aとあそぼう」
有無言わせずに強く手を引く。子供の力を振り解けないわけがなかったが、迷子が両親を見つけた時のように、ラウールはその手を離さなかった。
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霞(プロフ) - takkimakkiさん» 嬉しいコメントありがとうございます！これからも素敵な百合組お届けできるように頑張ります！ (2023年1月2日 23時) (
レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
霞(プロフ) - まなみんさん» コメントありがとうございます！励みになります( ¨̮ ) (2023年1月2日 23時) (レス) @page30 id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
takkimakki(プロフ) - すごく好きなお話です。ころからも楽しみにしています！！百合組、素敵です。 (2022年12月29日 10時) (レス) @page34 id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
まなみん(プロフ) - 続きが気になります！無理せず更新頑張って下さい！ (2022年12月11日 8時) (レス) id: 5b5d40fc7f (このIDを非表示/違反報告)
霞(プロフ) - 雪姫さん» ありがとうございます！マイペースですが、更新頑張ります。 (2022年12月5日 0時) (レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霞 | 作成日時：2022年11月30日 1時
