検索窓
今日:24 hit、昨日:21 hit、合計:416,027 hit

. ページ1

.



「だて、」




乾いた小さな声が部屋に響く。



畳が敷かれた広めの部屋。内装はシンプルなデザインだが、決して質素とは言えない。



時刻は午前3時48分。
イイコはまだ眠っていてもいい時間帯。




「はいはい、お嬢。俺を呼んだかな?」




気品のある声色。
早朝とは思えない通りの良い声。スっと音なく開いた襖の裏で夜通し起きていたように思える。




「だて、こわい夢」




布団からムクリと起き上がった少女が"だて"と呼ばれた青年に再び声をかける。



少女が薄紅色の浴衣をゆったりと着ているのに対して、彼が身に纏うのはパリッとした白いワイシャツ。気品のある顔立ちと対称的に緩んだ赤いネクタイ。




「見ちゃったかぁ、。大丈夫大丈夫、おいで」




また、音なく近づき、小さな身体に触れることは無理強いせず、左腕に赤薔薇咲く腕を広げ、待つ。





彼女はそれが当たり前であるかのように、左手の赤薔薇をまるで怖がらずに、その鍛え上げられた身体にすぐさま抱きついた。





切りそろえられた艶やかな黒髪。
少女のその髪を手で解きほぐすようにして、少女の心に染み付いた恐怖を気を紛らわせる。




「……だて、しょうたは?」

「ん〜?翔太はお仕事だよ」




布団から抜け出した身体は徐々に冷めてきて、身震いすると、大きな"だて"の身体が少女を包んだ。


温かいその体温と、声色に落ち着いてきたようだ。




「しょうた帰ってくる?」



「帰ってくるよ」




小さなその身体から一瞬目を離して、彼の鋭い目は光を失った。どこか、含みのある言葉。




「帰ってくるまで、だてが側にいて」



「もちろん、お嬢」





彼の空気が変わったことに彼女は気づいている。

なにを危惧しているのか分かっているかのように返答した、やけに大人びた少女。





膝の上に載せたその小さなお姫様を、割れ物に触れるかのように繊細に、優しく、愛情深く抱きしめた。






朝が来るまでまだ長い。





この(裏社会)に生きるものにとっては、余計に。



.

.→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (480 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1662人がお気に入り
設定タグ:SnowMan , 渡辺翔太 , 宮舘涼太
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - takkimakkiさん» 嬉しいコメントありがとうございます!これからも素敵な百合組お届けできるように頑張ります! (2023年1月2日 23時) (レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - まなみんさん» コメントありがとうございます!励みになります( ¨̮ ) (2023年1月2日 23時) (レス) @page30 id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
takkimakki(プロフ) - すごく好きなお話です。ころからも楽しみにしています!!百合組、素敵です。 (2022年12月29日 10時) (レス) @page34 id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
まなみん(プロフ) - 続きが気になります!無理せず更新頑張って下さい! (2022年12月11日 8時) (レス) id: 5b5d40fc7f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 雪姫さん» ありがとうございます!マイペースですが、更新頑張ります。 (2022年12月5日 0時) (レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2022年11月30日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。