君は生きたかったんだ。 ページ44
「……と、いうわけで。
君はなんとか夢から解放されたんだ。
君がどうしてあの悪夢を覚えてないのか
地味〜に疑問だが、
それは『まあ、夢って忘れるものだし』ってことで
片付けられるので考察ポイ投げしました。
めでたしめでたし〜」
「うん。
そこまでは理解出来るけど
なんでボリジがらいむの部屋に？
終わったあと自分の部屋に
帰ればよかったじゃないか」
「うーん、実はそういう訳にもいかなくてね。
寮の決まりで夜の12時過ぎたら
部屋の外に出ちゃいけないんだ。
なんだかんだ全部終わったのが
夜中の2時ちょっと前だったから、
外に出るわけにいかなくて。
しかもここは一応女子の部屋だからさ、
バレると面倒なのな」
へぇ〜、そんなルールが。
寮も寮で大変なんだね。
僕も門限が一応あるし、
自由はほとんど無いからちょっとわかる。
……って、
「え、らいむって女の子だったの！？」
「あ、気付いてなかったんだ」
「……ん」
「いや、さすがにそれは無理があるよボリジ。
一人称とか、口調が全体的に男の子だし、
服もメンズだからね。
さすがに見ればわかる、なんてことはないと……」
「ん」
「……それは君が特殊なんじゃないかな。
なかなかいないよ。
俺の性別を初見で見抜く人」
……それにしても本当に奇妙だなぁ。
やっぱり僕にはボリジの言葉は
『ん』ってしか言ってないように聞こえるけど、
らいむにはちゃんと届いているんだ。
本当に奇妙で、ちょっと羨ましい。
「……少なくとも、
あの夢の中ではちゃんと届いてたぜ？」
「え…？」
「夢の中に入った時、
俺はガレットを見つけられなくてね、
何度も君の名前を呼んだんだ。
『君がまだ生きているのなら、
返事をしてくれ』ってね。
そしたら君はちゃんと返事をしてくれた。
俺の声に反応したのは目を覚ましたかったから。
それに、君が空間を歪ませて
互いの姿を見えなくしていたのは
外の人間……つまり母親からのダメージを
最低限喰らわないようにするための自己防衛。
つまり君は生きたかったんだ。
だって逆に死にたかったら、
そんな抵抗をせずに
あの母親の罵詈雑言のナイフに
刺されてしまう方がずっと楽。
わざわざ抵抗する意味は無いね」
「な、なんか全然記憶にないからこそなのか
どうなのかはわからないけど、
改めて言われると恥ずかしいな。
……僕、夢の中でもっと恥ずかしいこととか
してないよね？」
「んふふ、さーてね？」
この瞬間、
僕の怖い人ランキングが更新された。
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作者名：鞦韆少年 | 作成日時：2018年12月9日 19時
