嘘吐きは一途である (ページ8)

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「我が名において我が魂と契約を果たさん！
応えて『黙示録』!」

眩い光が辺りを覆いつくし，男の魔道具は弾き飛ばされる。
尻もちをついた男の前には先程までいた，少年の姿はない。
Aは恍惚とした表情を浮かべる。

「なるほど…こうすれば一時的に力を取り戻すことが出来るのか…」

その姿は紛れもなくあの時の，夫婦として過ごしていた時の姿だったのだ。

『ターフェアイト…！』

驚きに疑問の尽きないフィオとは別に嬉しそうにするA。
ターフェはそんな様子を見ればサービスとでも言う様に，ひらりと手を振った。
それだけで表情が蕩けるのだから，相当だろう。

「あぁ，そうさ。
説明なら後で嫌というほどしてやる。
だが，その前に彼奴らをお仕置きしなくちゃな」

なんと羨ましい事か。
Aは詰め寄られる男たちを見て心底そう思った。
そんな様子にフィオは声を掛ける。

「Aは，ターフェのあの姿を知っているんですか？」
『知ってるよぉ。
あの姿は，僕が恋焦がれて仕方ない姿で，愛してやまない姿だよ。
嗚呼…本当，奪った彼奴が憎い…』

指の爪を噛み，何かを睨むように目つきを鋭くさせるA。
フィオは言い知れぬドロ付いた恐怖を感じる。
ひとの愛情とは行き過ぎることでこうも黒くなるのか。
視線を戻せば，ターフェが二人の男を爆死させようとしていた。

「ダメ！」

突如として消された杖に驚きが隠せないターフェ。
二人の様子をみて，そこまでしなくてもと答えるフィオに，何を言っているのかと叱りつけるAとターフェを他所に，マスグラは口を開く。

「マスター，あいつら逃げました」
「あ～～，お前のせいだお前！
お人好し馬鹿！」

悪い人に見えないというフィオと肩を持つマスグラ。
此処だけを見ればまだ平和なのだが…。
『馬鹿』と連呼する様子に，こちらが素だと思うのは仕方ないかった。