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75.背負うもの ページ39

『…木虎が物凄く努力して今の地位にいる事は知ってる。トリオンの事で悩んでたことも、A級になってからも色々言われてて苦しかったことも。
…あ、勘違いしないでね?見くびってる訳じゃない。ただ、木虎は"真っ直ぐ"だからさ。心配なんだよ』


虎「…はっ?」


『今回新型に捕まったのは正隊員2人と訓練生達。くだらない陰口を自分たち正隊員に向けさせるために「自分はA級だ」って言ってたんだね?』


虎「…っ、なんで、知って…」


『でもその言葉は自分自身を追い込んでたって事に、気づいてる?』


虎「…っ‼」


『「自分はA級だから」そういう風に思う度、プレッシャーになってたでしょ?』


虎「っ、でも、私はっ…」


『ねえ、木虎はさ、A級隊員である前に一人の中学生の女の子でしょ?嵐山隊は広報担当だし、私には分からない大変な事もあるんだろうな。でも、こんな事まで背負う必要ない。
…きっと、自分が思ってる以上に傷ついてるよ?』


木虎は、静かに涙を流していた。それを見られたくないのか、俯いている。


『確かに木虎は強いけど、まだ中学生なんだ。怖かったでしょう?辛かったでしょう?』


虎「…っ、怖かった、緊急脱出(ベイルアウト)できなくて、死ぬかと、思った」


やっと本心を言ってくれた。木虎を抱きしめて、頭を撫でながら語りかける。


『うん、そうだよね。でも木虎が敵の狙いを見抜いてくれたおかげで皆がスムーズに動けた。
もちろん私も。だから、ありがとう』


そう言うと、木虎はやっと顔を上げた。


『後の事は、私に任せて』


綺麗に微笑み、頭にポンと手を置いて言う。


虎「こ、子供扱いしないでください!」


『ふふっ、ごめんって。じゃ、そろそろ行こっか。引き止めてごめんね』


虎「…っ、あの、皐月先輩」


『ん?』


虎「…っあ、ありがとうございましたっ」


『…私はやるべき事をやっただけだよ』


もう一度微笑み、木虎と別れた。






さて次は…お、秀次先輩来てる。隊室に1人か。丁度いい。
秀次先輩が思い悩んでるのは近界民(ネイバー)に対する自分の意識。さて、どう切り出すか。

三輪隊の隊室に向かい、ドアをノックして入る。


『皐月です。失礼しまーす』


三「Aか。体はもういいのか?」


『はい、おかげ様で。お見舞い来てくれたんですよね?ありがとうございました』


綺麗に微笑んで言うと、秀次先輩は一瞬目を逸らして頷いた。


『ねえ、秀次先輩。ちょっとお喋りしない?』

76.その覚悟は→←74.何の為に



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作者名:しとろん3号 | 作成日時:2019年2月6日 18時

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