63.切れて ページ20
お説教を終えた皆はそれぞれに去っていく。
やっと解放された私は支部に戻ろうと立ち上がる。とその時、忍田さんから通信が入った。
忍「皐月、全部隊の撤退が完了した。サイドエフェクト貸してくれて助かった。御苦労だったな」
『いえ、役に立ったのなら良かったです』
ふっと息を吐いて「眼」を解除する。
忍「今日はもうしっかり休んでくれ。……私からの説教は後日だ」
『はーい…』
通信を切り、大きく伸びをした。隣にはとりまるがいる。
烏「A、帰るぞ。…トリオン体は解除しないのか?」
『あー、うん。外、寒いかなーと思って』
今トリオン体を解除する訳にはいかない。咄嗟に出た言い訳は変じゃなかったかな。
緑「でもその格好だと目立つんじゃない?まだ外明るいし」
『そうだけど…。でも寒いのイヤだしなあ』
とりまるも緑川も、周りにいる人たちは皆怪訝な顔をする。私がトリオン体で目立つのは好きじゃないって知ってるからだ。
……まずいな、怪しまれたままだといずれバレる。でも解除する訳にはいかない。トリオン体のまま帰るには………そうだ、デザインを元の制服に変えればいいんだ。それなら目立つこともない。よし、とりあえず本部の自室へ向かおう。と一歩踏み出したその時、体の中で何かが切れる音がした。
『あ、』
そう、遂にトリオンが無くなってしまったのだ。
あーあ、せっかく今まで隠し通せたのになあ。お説教が予想以上に長かったせいで計算が狂った。支部に戻るまでは保たせるつもりだったのになあ。
よりによって今、しかもこんなに人がいる所でなんて、タイミングが悪すぎる。
自嘲気味に笑いながら、トリオン体が生身へと戻っていくのを感じていた。
辺りが白煙で包まれた。周りの視線が集まっているのは見なくても分かる。
視界が白に染まる。
どっちが上で下なのか、右なのか左なのか、何も分からない。何も見えない。何も聞こえない。
瞼がゆっくりと下がっていく。
頭が割れるような痛みと共に感じたのは、体が落ちていく浮遊感。
あとは、自分の体が燃えるように熱かったって事だけ。
次の瞬間、
頭の中で何かがぷつんと切れて、
真っ白だった視界が一瞬で黒に染まった。
────────私は意識を失った。
68人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しとろん3号 | 作成日時:2019年2月6日 18時