七夜 ページ8
はっきり言って散々だ。
煌びやかな姉二人に兄二人。
四人仲良くこちらを見て何やらこそこそと話している。
食事をする前だけど、もう帰ってやろうか。
より一層表情を歪ませて溜息をつく。
この家の中に私の味方は誰一人していない。召使いも、もちろんお父様も。
__________
空気が悪い中夕食が始まった。
久しぶりに会った家族は何も変わりなく、私に向けてくる視線も何も変わっていなかった。
次々に運ばれてくる料理に口を付けていく。
本家の皆様方はこんな食事を毎日…ね。
別に不満がある訳では無いんだけど。
何だか、料理を口に運ぶ私への視線が何処かおかしい気がする。何かを待っているような、
「……っ、う」
副菜のサラダが、変に苦い。
真逆。
吐き出さなきゃ、と思いつつ皆が見ている中吐き出す事なんて出来ない。
覚悟を決めて一思いに飲み込む。
わざとナプキンを綺麗に畳み、テーブルへ置く。
「ご馳走様でした、もう結構ですわ」
召使いが椅子を引こうとしたのを手で制し、傍に置いていたバッグを片手に大広間を抜け玄関まで早足で抜ける。
「Aさん、食事中に失礼で御座いますよ！お待ち下さい！」
召使いの制止の声も振り切って、重いドアを開く。
「こんな物を私の料理へ忍ばせておいて、よくもそんなことが、言えるわね…いい加減にして！」
軽く二三回咳き込んで、外へ出る。
帰らなくちゃ、直ぐに胃の中の物を吐き出さなくては
きっと致死量では無い筈。
これは私への牽制と言ったところだろう。
ふらふらと、頭が揺れる。
景色もチカチカと瞬いて、脂汗が頬を伝う。
私、死んでしまうの、？
こんな所で、倒れる訳にはいかないのに…
そんな思いとは裏腹に、瞼はどんどん下がっていって__
本家の屋敷から少し歩いた所で、膝をつく。
人気が無くて、まだ良かったと思う反面このまま倒れたら死んでしまう可能性だってある。
誰か、助けて…おねがい。
「A」
最近は聞き慣れた、酷く落ち着く、低い声。
その声の持ち主は分かってる。
「辛いかもしんねぇけど俺の首に手ぇ回せ。落ちるぞ」
「……かい、と…」
「おう、今はキッドだけどな」
横抱きにされ、指示された通りに手を回す。
「…おもく、ない…？」
「重いわけねぇだろ、辛いなら喋んな」
「…う、ん…ごめん、ね…」
そのまま彼に身を預け、私は意識を飛ばした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1747人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蘇澳(プロフ) - 絲さん» 飛んできてくださってありがとうございます！よろしければまた読んでやってくださいませ〜 (4月25日 23時) (
レス) id: 92b4cb2eaf (このIDを非表示/違反報告)
絲(プロフ) - 更新通知を受け、すっ飛んできました…本当に大好きな作品なので、続編とっても嬉しいです（ ; ; ）楽しみにしてます♪ (4月25日 0時) (レス) @page43 id: 86d7744b06 (このIDを非表示/違反報告)
シアん。 - 軽く23回咳き込んだに見えてしまった (8月19日 8時) (レス) @page8 id: 2170ff9ae1 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - この小説私得だ…めっちゃ好きー。言葉に表せないくらい好きです！これからもがんばってください！ (2019年11月3日 22時) (レス) id: 1eb05cfcac (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - チイナさん» 私の拙い文章にそこまで言ってくださって本当にありがとうございます…！チイナさんのお言葉に感動して涙が出ました…そこまで私の作品を楽しんで下さりありがとうございました！感謝でいっぱいです！ (2019年7月24日 19時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蘇澳 | 作成日時：2019年4月15日 7時
