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三十三夜 ページ34

「…結婚するつもりはありません。お帰り下さい!」


無様なお父様のその姿に、思わず大声で帰れと叫ぶ。


「このままで終わると思うな、」


そう吐き捨てて、出て行った。


しんとした部屋に私一人。

さっきお父様が言った言葉が頭をぐるぐると巡っていく。


“あの子達を手放すのは嫌なんだ”


悲しまず手放せるのはお前だと言われているようなもの。

お前はいなくてもいいと、そう言われている気分。



はあ、と大きな溜息が出る。

私だけどうしてこんなに不幸なのと自惚れてしまいたくなる。
もっと不幸な子は沢山いるのに。駄目ね、


控えめにドアを叩かれ、入って来たのは礼子だった。


「…Aさん、大丈夫?」


「あぁ、礼子……えぇ、大丈夫」


「Aさんは、こんな状況から逃げたいと思わないの?」


「……逃げ出したいわ、今すぐにでも。でも、ここには礼子もお母様の思い出もある。それに、私ここが大好きだから…」


だから、辛くないのよ礼子。

彼もここへ来てくれるし。


________


「最近、少し元気ねぇんじゃねぇか?ちゃんと食ってんのか」


艶やかに手摺に座った、また真っ白な彼は私の頬を撫でながらそう言った。


「少し、面倒な事があって。折角、貴方が促してくれたのに…」


私の頬を撫でるその手を包み込んで、頬を寄せ縋る。


「何があった」


優雅に手摺から飛び降りると、私の手を引いて部屋の中に入る。

椅子に腰を掛け、私に話すよう促す。


彼の優しい瞳に、全てさらけ出してしまいたくなる。
そう考えていると涙が止まらなくなって、嗚咽を漏らす。


「ゆっくりでいい、お前をそうさせた奴の話聞かせて」


こくりと肯定し、あった事を全て快斗に話した。



「…ちっ、俺がした事が逆に使われたってことか…悪ぃA」


「快斗が謝ることじゃないわ…!嘘偽りでも、嬉しかったもの…」


「A……」


「ありがとう、快斗。貴方のお陰よ」


やっぱり好き。屈託のない笑顔も好きだけれど、私を案じてくれているその悲しげな顔も。



「ここは責めるとこだぜA…」


「好いた人を責める程嫌な女ではないわよ」


好いた人と、強調して言ってやるとあからさまに顔を赤くした彼は慌てた様子でいる。


「ば、バーロー!しれっとそういうこと言うもんじゃねぇ!」



「思った事を素直に言っては駄目なの?」


その言葉にまた赤面した彼だった。

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蘇澳(プロフ) - 絲さん» 飛んできてくださってありがとうございます!よろしければまた読んでやってくださいませ〜 (4月25日 23時) (レス) id: 92b4cb2eaf (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新通知を受け、すっ飛んできました…本当に大好きな作品なので、続編とっても嬉しいです( ; ; )楽しみにしてます♪ (4月25日 0時) (レス) @page43 id: 86d7744b06 (このIDを非表示/違反報告)
シアん。 - 軽く23回咳き込んだに見えてしまった (8月19日 8時) (レス) @page8 id: 2170ff9ae1 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - この小説私得だ…めっちゃ好きー。言葉に表せないくらい好きです!これからもがんばってください! (2019年11月3日 22時) (レス) id: 1eb05cfcac (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - チイナさん» 私の拙い文章にそこまで言ってくださって本当にありがとうございます…!チイナさんのお言葉に感動して涙が出ました…そこまで私の作品を楽しんで下さりありがとうございました!感謝でいっぱいです! (2019年7月24日 19時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘇澳 | 作成日時:2019年4月15日 7時

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