検索窓
今日:91 hit、昨日:1,963 hit、合計:597,200 hit

三十一夜 ページ32

…彼、今、何て………


後ろからすっと両手を握られる。

「…っ、快斗、今貴方……」


「一回しか言わねぇって言ったろ」


ちゅ、とリップ音を立てて私の手に口付けた彼。


ふわりと彼の体が離れて、飛びずさる。


「伝えられて良かった。……それでは、」


恭しく礼をして、不敵な笑みを浮かべた。


「…待って!私も、貴方に伝えたい事があるわ!快斗!」

私がそう叫んだ瞬間、大きな音を立ててドアが開かれる。


「怪盗キッド!!待て!」

数十人がずらりと並んでこちらへ銃を向けて来る。


「おいおい、こっちにはお嬢様が居るってのに…」

快斗はその場で両手を挙げて降参の意を表し、警官達が銃を下ろした所でワイヤーを飛ばして宙に舞う。


「今からお前を攫うから、ちゃんと捕まってろよ?A」


軽くウィンクをして言ったその言葉に全身が熱くなる。

片手でぐっと抱き寄せられ、そのまま窓から身を投げる。


「きゃっ……!」


「怖くねぇよ。ほら、見てみろ」


恐る恐る目を開けてみると、綺麗な夜景が目に入る。


「…きれい…私、飛んでる…」


「見たこと無かったか?」


「無いに決まってるでしょう?…ふふ、」

目線を夜景から快斗に移す。

彼の瞳に私が映っている事が凄く嬉しくて、飛んでいるにも関わらず彼の首に腕を回す。

耳元にそっと口を寄せる。




「…好きよ快斗」



刹那、ぐらっとハングライダーが揺れて、思わず声を上げる。


慌てて快斗が体制を立て直し、飛び続ける。


「ば、バーロー、こんな時にんな事言うんじゃねぇっ!」


「ふふっ…そんなに驚くと思わなくて。気付いてるものだと思ってたもの」


互い熱い瞳のまま、見詰め合う。


「…A、俺自惚れて良いのか?」


「そういう意味じゃなきゃどんな意味よ」


家のバルコニーへ着く。


快斗は私をすっと手摺の中へ降ろし、自分は手摺の上に立つ。


無駄の無い綺麗な所作で片膝を着き、私の頬へ手を伸ばす。


「ずっと、こうしたかった」


有無を言わせない彼の熱くも静かな瞳に見下ろされ、胸が一層高鳴る。


彼の顔が目の前いっぱいになった時、ふっと目を閉じた。



ふわ、と彼の香りが強くなって、静かに口付けた。

三十二夜→←三十夜



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (754 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1737人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

蘇澳(プロフ) - 絲さん» 飛んできてくださってありがとうございます!よろしければまた読んでやってくださいませ〜 (4月25日 23時) (レス) id: 92b4cb2eaf (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新通知を受け、すっ飛んできました…本当に大好きな作品なので、続編とっても嬉しいです( ; ; )楽しみにしてます♪ (4月25日 0時) (レス) @page43 id: 86d7744b06 (このIDを非表示/違反報告)
シアん。 - 軽く23回咳き込んだに見えてしまった (8月19日 8時) (レス) @page8 id: 2170ff9ae1 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - この小説私得だ…めっちゃ好きー。言葉に表せないくらい好きです!これからもがんばってください! (2019年11月3日 22時) (レス) id: 1eb05cfcac (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - チイナさん» 私の拙い文章にそこまで言ってくださって本当にありがとうございます…!チイナさんのお言葉に感動して涙が出ました…そこまで私の作品を楽しんで下さりありがとうございました!感謝でいっぱいです! (2019年7月24日 19時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:蘇澳 | 作成日時:2019年4月15日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。