二十四夜 ページ25
その後から、何も手につかなくなった。
でも何もしないわけにも行かないし、何もしないと余計に彼の事を考えてしまうから、まだ終わっていない課題を始めた。
問題用紙に、さらさらと書かれた彼の綺麗な字。
『お前意外に勉強出来ねぇんだな?』
『う、うるさいわねだから頑張ってるじゃないっ!』
『はははっ、そうだな。頑張れA』
何気ない会話が思い出される。
その字の上に、ぽたっと涙がこぼれる。
「…私、快斗に酷いこと……」
あの快斗があそこまで緊張したって事は、凄く大事な事を私に言おうとしてたんだわ。
何なら、“好きな人が出来たからもうここへ来られない”とか……
好きな人……快斗にも、居るのかしら…
「…そんなの嫌よ……」
自分が放ったその言葉にはっとして口を押さえる。
「な、なんて事……!」
快斗にそういう人が出来るのが嫌みたいな…
「…はぁ…こんな事してると、恋人に振られた女みたい…」
自嘲するために言ったその言葉を、もう一度噛み砕いていく。
恋人に振られた……
恋人……?
恋……
恋!?
「…そうだわ…私、快斗に、恋をしているのね……」
くしゃりと問題用紙を握る。
「…絶対、実らないじゃないの…」
彼は、もう二度とここへは来ない。
私自身が遠ざけた。
「…馬鹿ね私……」
もう少し気付くのが早かったら、“好き”の言葉で彼を引き留められたかもしれないのに。
涙がとめどなく溢れて、握った手の上に降ってくる。
「……好き、好きよ快斗…」
もう伝わらない自分の想いを言葉にすると、胸が苦しくなった。
本当に、さようならね。快斗。
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蘇澳(プロフ) - 絲さん» 飛んできてくださってありがとうございます!よろしければまた読んでやってくださいませ〜 (4月25日 23時) (レス) id: 92b4cb2eaf (このIDを非表示/違反報告)
絲(プロフ) - 更新通知を受け、すっ飛んできました…本当に大好きな作品なので、続編とっても嬉しいです( ; ; )楽しみにしてます♪ (4月25日 0時) (レス) @page43 id: 86d7744b06 (このIDを非表示/違反報告)
シアん。 - 軽く23回咳き込んだに見えてしまった (8月19日 8時) (レス) @page8 id: 2170ff9ae1 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - この小説私得だ…めっちゃ好きー。言葉に表せないくらい好きです!これからもがんばってください! (2019年11月3日 22時) (レス) id: 1eb05cfcac (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - チイナさん» 私の拙い文章にそこまで言ってくださって本当にありがとうございます…!チイナさんのお言葉に感動して涙が出ました…そこまで私の作品を楽しんで下さりありがとうございました!感謝でいっぱいです! (2019年7月24日 19時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘇澳 | 作成日時:2019年4月15日 7時