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二十一夜 ページ22

「…ふぅ、この程度だったら縫合の必要は無いわね……」


大方処置を終わし、包帯をぎっちり巻いていく。
これがとても大変。


「…ん、腕や足の包帯は巻けたけど、腹部大変ね…」


快斗が寝たままだとどうしても巻けない。
悪いけれど起きてもらうしかないかしら……


「快斗、ごめんなさい…包帯を巻きたいから体起こせる…?」

もしかしたら眠ってしまったかも、と思っていたけど薄く目を閉じているだけで、すぐ反応を見せた。


「あ、あぁ……っ、」

背中に手を回して起こす手伝いをし、やっと起き上がる。
彼に負担が掛からないように手早く巻かなくては。


ベッドへ乗り、快斗の正面へ行くと抱き着くように手を回して手早く巻いて行く。


「ごめんね、もう少しで終わるから我慢して…」

端と端をしっかり結び合わせて、上から使用人用の男物のシャツを着せる。

ゆっくり寝かせ、シャツのボタンを閉めているとその手をぎゅっと掴まれる。


急かす合図かと思い、申し訳なさげに声を掛ける。


「ごめん、快斗に負担ばかり掛けさせて…早くするわ、」

お湯のせいでひりひりと痛む指を酷使して、急いで閉めようとする。が、やっぱり手が思ったように動かない。


「…違ぇよ、A…」


思っていたのとは全然違うその言葉に、驚いて顔を上げるとふわりと抱き締められた。


「…手、火傷しちまったじゃねぇか…痛むか?」

私の手を取って、そっと口付ける快斗。


「…ば、馬鹿ね…私の手より自分の体を案じてよ…」


ぼろぼろと涙が溢れてくる。


「私、怖かったんだから…貴方が死んでしまうと思って…!あんな大怪我するなんて、聞いてないわ…っ、」


「…っ、悪ぃ」


そのままベッドの上で痛いほど抱き締められ、思わず彼の首へ腕を回す。


「っ、快斗…まだ傷が…」


「…そうだな、大人しく寝る」


きつく抱き締められていた体が離れ、少しもの寂しくなる。

快斗をベッドに寝かせ、布団を掛ける。


額の汗を拭い、今日はソファで寝ようとベッドから離れようとした時、ぐっと掴まれた腕。


「一人で寝せるかよ」


そのまま引き寄せられ、彼の腕の中。


「…快斗が、一人で寝るのが寂しいだけじゃないの?」



「ははっ…そうかもしんねぇな」



すぐに目を瞑ってしまった彼が寝息を立てるまで、ずっと見つめていた。

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蘇澳(プロフ) - 絲さん» 飛んできてくださってありがとうございます!よろしければまた読んでやってくださいませ〜 (4月25日 23時) (レス) id: 92b4cb2eaf (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新通知を受け、すっ飛んできました…本当に大好きな作品なので、続編とっても嬉しいです( ; ; )楽しみにしてます♪ (4月25日 0時) (レス) @page43 id: 86d7744b06 (このIDを非表示/違反報告)
シアん。 - 軽く23回咳き込んだに見えてしまった (8月19日 8時) (レス) @page8 id: 2170ff9ae1 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - この小説私得だ…めっちゃ好きー。言葉に表せないくらい好きです!これからもがんばってください! (2019年11月3日 22時) (レス) id: 1eb05cfcac (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - チイナさん» 私の拙い文章にそこまで言ってくださって本当にありがとうございます…!チイナさんのお言葉に感動して涙が出ました…そこまで私の作品を楽しんで下さりありがとうございました!感謝でいっぱいです! (2019年7月24日 19時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘇澳 | 作成日時:2019年4月15日 7時

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