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二十八夜 ページ29

金持ちは本当にパーティーが好きだなと強く思う。
婚約、結婚、披露宴……数えたら切りがないくらい。


見合いするだけなのに、態々人を呼ぶなんて…


「Aさん、具合でも悪い?」

思いを馳せていたら、最近少し仲が良くなった召使いが私に声を掛けてくれた。

「あ、いえ何ともないのよ」


「やっぱり、見合い嫌?」


「……そうね、ふふっ」


「あらあら。…家の為だって言われてもね?」


「そうなのよ。はぁ……誰か連れ出してくれないかしら」


「Aさんも、意外とロマンチストね?」


「あら、私結構ロマンチストよ?」


二人で会場の隅で笑い合っていると、縫がこちらへ歩いてくる。

召使いの礼子が少し前に出て、私の前に立ち塞がった。


「そう睨まないでくれ。俺はAと踊ろうと思っただけだ」


「…まだそんな時間ではございませんし、A様はご挨拶などでお疲れです。もう少しお待ち下さい」


「…召使い風情が、俺に口答えか?良い身分じゃないか」

縫が礼子へ近付いて、胸ぐらを掴み引き寄せる。

思わず椅子から立ち上がる。


「私はA様の御身を守るためにここにおります。相手がどんな方だろうが、申し上げる時は申し上げます」


礼子……

そんな事……



次の瞬間、かわいた音が会場に響いた。


頬を抑えて膝を着く礼子。


「……っ、礼子!」


彼女に駆け寄り、頬に手を当てる。

振り向いて縫を睨み付ける。


「貴方……私の召使いに手を上げるなんて!…最低な殿方ね!」


会場がざわざわと騒がしくなっていく。

異変に気付いたお父様がこちらへ近寄ってくる。


「何事だ、」

事情を説明しようと口を開いた瞬間、


「Aが、私のせいにしようとしたのです。彼女は想い人が居るから、私と結婚したくないと彼女は私にそう言いました」


先に口を開いたのは縫。


良くもそんな事が言えるわね……!


その言葉に、またざわざわと騒がしくなる会場。


「あのお嬢さん、婚約者が居るのに想い人ですって…?」


「東條家の恥晒し」


私の耳がそんな言葉を拾っていく。

……婚約者なんかじゃない…


「…この縁談は破談ですわ。私は貴方みたいな殿方と結婚なんてしたくありません!」


すっと立ち上がって右頬を思い切り引っぱたく。


礼子を支えて会場を出て行った。

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蘇澳(プロフ) - 絲さん» 飛んできてくださってありがとうございます!よろしければまた読んでやってくださいませ〜 (4月25日 23時) (レス) id: 92b4cb2eaf (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新通知を受け、すっ飛んできました…本当に大好きな作品なので、続編とっても嬉しいです( ; ; )楽しみにしてます♪ (4月25日 0時) (レス) @page43 id: 86d7744b06 (このIDを非表示/違反報告)
シアん。 - 軽く23回咳き込んだに見えてしまった (8月19日 8時) (レス) @page8 id: 2170ff9ae1 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - この小説私得だ…めっちゃ好きー。言葉に表せないくらい好きです!これからもがんばってください! (2019年11月3日 22時) (レス) id: 1eb05cfcac (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - チイナさん» 私の拙い文章にそこまで言ってくださって本当にありがとうございます…!チイナさんのお言葉に感動して涙が出ました…そこまで私の作品を楽しんで下さりありがとうございました!感謝でいっぱいです! (2019年7月24日 19時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘇澳 | 作成日時:2019年4月15日 7時

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