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十五夜 ページ16

「……A?」


彼の案じた声に、はっと気が付く。

目の前には彼の整った顔があって、思わず俯く。


あぁ恥ずかしい……
なんて事思ってるの…?彼にだって、大切な人の一人や二人…好きな人だって___


好きな人…?


「……そ、んな…」

もしかして私、彼の邪魔ばかりしているんじゃ…?


「…おい、A」


「……っ、な、何でも…」


「何だよ、さっきから変だぜ?」


心配そうに私を見つめる彼のその顔も見られなくて、慌てて言い訳を思い浮かべる。


「…少し、具合が悪くて…部屋に戻るわ、一人で大丈夫だから…」


「お、おう…何かあったら呼べよ」


「えぇ、ありがとう」


身を翻し、私に充てられた客室へ入る。

そのままソファへ結った髪が解けないように身を沈める。


「…私、どうして今まで気付かなかったのかしら…彼には彼の生活があって…大事な人も居るのに…」


深く溜息をつく。

ここ数週間は彼のお陰で楽しくて、だから自分勝手になって来てしまった。自分のことしか考えてなかった…


「私もあの人達と変わらないのかもしれないわ…」


顔を覆って、深呼吸をした瞬間、

何の声もなくあっさりと開かれた扉、そこから長身の見覚えのある男が入ってくる。


危機感を覚え、慌ててソファから体を起こし睨む。


「お部屋をお間違いではなくて?先程の殿方」


こちらの心境がバレると面倒だから、強がった言葉を投げ掛ける。
大声でも出して、人でも呼ばなければ…!


「人でも呼ぼうとなさってるんでしょう?だが、無理ですよ。個室個室防音だと、先程セレモニーで仰っていたではないですか、Aさん」

いつの間にか男の後ろ手でドアが閉められ、鍵もかかる。


これはまずい…


「…貴方の目的は何です、私を人質に取ったところでお父様はお金なんて出しませんわ」


「金…?そんなものじゃない。私が欲しいのは貴女だ、A」


その言葉に息を飲んだ瞬間、男が覆いかぶさり服を剥ごうとする。


「…っ!やめて…っ!いや……!」



「あんな庶民の様な男に、貴女を取られてたまるか!」


私の服に手をかける男の手も、解けないくらいの強い力も爛々と光った目の全てが怖い。


音を立ててドレスの肩紐が千切れる、


「っ……!」


反抗を続けていた私だったが、テーブルの上の何か重いものに手が当たる。


思い切りそれを振り上げ、男の方を振り返らず全速力で部屋を出た。

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蘇澳(プロフ) - 絲さん» 飛んできてくださってありがとうございます!よろしければまた読んでやってくださいませ〜 (4月25日 23時) (レス) id: 92b4cb2eaf (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新通知を受け、すっ飛んできました…本当に大好きな作品なので、続編とっても嬉しいです( ; ; )楽しみにしてます♪ (4月25日 0時) (レス) @page43 id: 86d7744b06 (このIDを非表示/違反報告)
シアん。 - 軽く23回咳き込んだに見えてしまった (8月19日 8時) (レス) @page8 id: 2170ff9ae1 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - この小説私得だ…めっちゃ好きー。言葉に表せないくらい好きです!これからもがんばってください! (2019年11月3日 22時) (レス) id: 1eb05cfcac (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - チイナさん» 私の拙い文章にそこまで言ってくださって本当にありがとうございます…!チイナさんのお言葉に感動して涙が出ました…そこまで私の作品を楽しんで下さりありがとうございました!感謝でいっぱいです! (2019年7月24日 19時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘇澳 | 作成日時:2019年4月15日 7時

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