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贈り物 弐 ページ14

「んん…どうしんしょう…」

蘇芳か、鼠か熨斗目か……


「何なら全部買っていけよ、」


「そんな金子ありんせん!」


「はは、冗談に決まってンだろ。そういや、お前が羽織繕うのか」


「へぇ、その積もりですが」

そう言うと何か含んだ様な笑みを向ける龍さん。

「そこまでお前が気を掛けるなンて、真逆惚れてンのかい?」


「んなっ!そんな、事…っ」


「ンな反応、応と言ってるようなもんじゃねぇか」


「もう!龍さんたら!」


「まずお前は反物を早う選べ!」


「あっ、申し訳ありんせん」

んん……同仕様…

そんなに着ない鼠や熨斗目も良いけれど、気高くて綺麗で温かい彼の人は…


「彼は矢っ張り、蘇芳かしら…」


「よし来た、紐は俺が選んでいいか」


「へぇ、良いのをお願いしんす」


「おう、ちょいと待ってな」

喜んでくれる彼の顔を思い浮かべ、嬉しくなる。
最近買い物していなかったからとても楽しい。


次は一緒に来たいな、なんて…


「おい、にやけてンじゃねぇぞ?ほら、この風呂敷もやる」


「まぁ、ありがとうござんす!あぁ、これで足りんすか…?」


「ちょいと足りねぇが、まけると言ったのは俺だ。次はまけねぇからな?」


「へぇ…ありがとうござんす、また来んす」

店先まで龍さんが見送ってくれて、手を振って返した。

一日も早く仕立てて、彼の肩に掛けてみたい。


物怪庵を呼ぼうとした瞬間、背筋が凍る。


「やぁ、また会ったねぇ」


「っ……」


下駄を鳴らして駆け出す。
反物が包まれた風呂敷をぎゅうと抱き締めて、走る。


「物怪庵__」


「駄目だなぁ、逃げたら」

肩をぐいと引かれ、そのまま裏へ連れて行かれる。


「このまま着いてきてくれるよね?雪女」


「…私はこれから繕い物がありんす、辞めてくんなんし…」


「流石廓に居ただけはあるねぇ」

立法様は耳元に口を寄せ、酷く低い声で囁いた。


「もう一度、戻して上げようか」



「っ……!離して、くんなんし…」

腕を引き剥がそうとするが力が強く、剥がせない。


「誰かが助けに来るとは思わない方がいい。それじゃあ健闘を祈るよ」

いつの間にか立法様の後ろには男達が数人立っていて、此方へじりじりと寄ってくる。


「いや……辞めて、」


せめてもの思いで風呂敷は意地でも離すまいと、強く抱き締めた。

廓→←贈り物 壱



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EMIKO(プロフ) - はい!!大丈夫です!! (2019年4月1日 19時) (レス) id: 04697b5525 (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - EMIKOさん» 本当にありがとうございました!イラスト載せさせて頂いてもいいですか? (2019年4月1日 18時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
EMIKO(プロフ) - いえいえ!!こちらこそ描かせて頂きありがとうございました!!これからも応援します!! (2019年4月1日 18時) (レス) id: 04697b5525 (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - EMIKOさん» いえいえ!ありがとうございます!とても嬉しいです! (2019年4月1日 17時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
EMIKO(プロフ) - 描けました!!想像と違ったらすいません、、、 (2019年4月1日 17時) (レス) id: 04697b5525 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘇澳 | 作成日時:2019年1月28日 8時

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