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「何だその怪我は」


う。やっぱり鋭いなこの人。


『あ、はは…私以外にドジなとこあるの。昨日部屋の片付けしたんだけど上から物入ったダンボール落ちてきてねー』


「嘘が壊滅的に下手だなお前は」


約束していた零さんと会う日。私は久方ぶりの受験勉強をしていた。そして色々と零さんに教えて貰っている。それにしても教えるの上手だなぁ…


ふと零さんが私の前髪を梳いて、額を露わにする。
あ、待ってそこは見られたく__

「…待て、お前火傷までしてるじゃないか。どうしてこういう傷を放っておく!仮にも女だろう」


それ言わないで貰えますー?仮にも女て。酷い言われよう。
でも。心配されたのと、良い意味で怒られたのが嬉しくて、思わずにやけてしまう。


前話で分かったと思うけどうちは人間の集まりじゃない。子供を可愛がるなんて文化はなくて、女は政略結婚の道具。男は金儲けの道具として私たち兄弟は育てられてきた。

私には兄一人、姉二人がおり、もうみんな家に飼い殺されてしまっている。


だから今の零さんみたいに怪我をして心配されるのも、怪我の処置をしなくて怒られるのも無かった。


なのにこんな人間らしく育ったのは、紛れもなく目の前のこの人のおかげである。


________


『零兄ー?どこにいるの?』


「こっちだよA。こっちで一緒に遊ぼう」


『あ、待って!』

大きくて優しくて綺麗な零兄に近付きたくて、走っていくと石に躓いて転んだ。痛くて恥ずかしくて泣いていると零兄が抱っこしてくれた。

その温かい手が大好きで、よく抱っこをせびっていた記憶がある。


ある時は。

「A、こんなの持ってなかったでしょ?」

『違う、持ってたもん。おとーさんとおかーさんに買ってもらったんだもん!』


違う、言いたかっただけ。
小学校の同じクラスの子がそう言って自慢してたから。私も言いたかったの。気付けばその子が持っていたその物を盗ってしまった。


「悪い手!」

怒っても手を挙げなかった零兄がその時初めて私の手を打った。

「どんなに欲しくても人の物は取っちゃ駄目。自分がされたら嫌なことは人にしちゃいけないんだよ」


『…うっ、ひぐっ…』

上手く泣けない私を零兄はそっと抱き締めて、その後一緒に物を返しに行ってくれた。


この人が居なかったら、今頃私は。

「何だ、分からないところでもあるのか?」


『…ん、ここ』


こうして生きてはいられなかった。

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ウミ(プロフ) - やばい。感情移入しすぎて泣いてしもた。 (2021年7月18日 8時) (レス) id: a500a044fa (このIDを非表示/違反報告)
まな(プロフ) - !!!( ゚д゚)ハッ!!!!続きが気になります……!! (2020年12月22日 13時) (レス) id: b4debc2124 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘇澳 | 作成日時:2020年10月29日 23時

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