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「有馬、少し時間良いか。紹介したい者がいる」
柔らかい笑みをした零さんがこちらへやって来て、その笑顔のまま隣の女性を見る。
ふわふわとした栗毛の髪、ぱっちりとした大きな瞳。
いかにも男性が好きそうな佇まいをしている。
『は、はい』
私はさっと立ち上がると、二人に向き直る。
何だかこの場に、この二人の中に居るのが間違っているかのようにも思える。
「初めまして。零くんからあなたの事は色々と聞いてるわ、私は西条
零くん、ね……さすが同期。すれば
「瑠香は今までは別の部署にいたんだが、事情があって飛ばされたんだ」
「ま!飛ばされたなんて人聞きの悪い!零くんのお守りが居ないから私がやってきたんじゃない」
いい、いい。もうおなかいっぱいです。今私苦笑いすら出来てない気がする。だめだめこれは仕事と考えて。
『ふふ、お二人共本当に仲がよろしいんですね。改めまして有馬Aと申します。今後とも宜しくお願いします、西条さん』
「もう、Aちゃんは固いなぁ。私の事も気軽に呼んでね」
『いえ、分は弁えておりますので。お気遣いありがとうございます。では私も仕事がありますので失礼します』
失礼がないよう深く礼をして、席に着く。
極力関わらないようにしよう。努めて好かれも嫌われもしないようにしよう。
あぁもう何故かいらいらが止まらない。
私彼のこと知ってるアピールはいいから。仕事さえしてくれればそれで良いです。私のことは気にしないで。
赤井さん早く来て。一緒に飲みに行こ。
_______
『…ふあ、ああ遅くなっちゃったな。一回帰ろ』
今日は残業するつもりじゃなかったのに。
そして大きく伸びをしてから、オフィス内を見渡す。
うわ、いつの間にかほぼ誰もいない。
あ!確か今週あんまり忙しくないから残業無しウィークだったっけ!
やば、早く帰んないと怒られる!主に零さんに!
ささっと荷物をまとめて、パソコンをシャットダウンする。
コップなど机周りをさらっと片付けてからそろりとオフィスを出た。
するとそこに見えたのは。
「…、じゃ、ないの!?」
「…落ち着け、」
何やら男女の争う声が。…何だか聞き覚えのある声だなと思ってそれを通り過ぎようとした時。
「零くんの馬鹿、零くんの婚約者は私でしょ!どうしてあの子にも優しいの、!あの、有馬って女に!」
うわ、また私かよ。
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ウミ(プロフ) - やばい。感情移入しすぎて泣いてしもた。 (2021年7月18日 8時) (レス) id: a500a044fa (このIDを非表示/違反報告)
まな(プロフ) - !!!( ゚д゚)ハッ!!!!続きが気になります……!! (2020年12月22日 13時) (レス) id: b4debc2124 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘇澳 | 作成日時:2020年10月29日 23時