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あれから何故か零さんと話すことが減って、仕事の話も話しかけられることが少なくなっていた。
もう少しで合同任務だって言うのに、私がもっと不機嫌にしてどうする……
また最近、零さんに愛の告白をしていない。
零さんが私を拒むように、私も零さんも残業が増えて行った。
「有馬ちゃん、降谷さん知らない?」
『…え?どうかしたんですか?』
「うん、仮眠室から出てこないんだよね。30分仮眠するとか言ってたんだけど、それから戻ってきてないんだ」
うーん、それは確かに変だ。
真面目な零さんが時間を守らないなんてことがあるだろうか。
『分かりました、見に行ってみます』
「うん、よろしくね」
________
仮眠室棟に向かうと、一つだけ使用中の札が掛かった部屋のドアノブに触れる。
次いでこんこんとノックするが、中から返事が帰ってくることは無い。
『れ、…降谷さん?』
倒れてたらどうしよう、なんて嫌なことを考えながらドアノブに手をかけゆっくり押す。
『入りますよ』
意を決して暗い室内に入る。
すると、急に肘辺りを掴まれてぐいと引き寄せられる。
なんだか最近こんなこと多いなぁ。ね、零さん?
どん、と鈍い音と共に先程開けたドアに押し付けられる。
『……っ、』
けほ、と乾咳が出て相手を見やる。どんな顔で私にこんなことをしてるの。ねぇ、零さん。
ぎり、と音がするほど右手首を捕まれドアに縫い付けられる。空いた左手で零さんの胸を押すがビクともしない。
『っ、れ、さん』
右手首を動かして、離れられるか試すが全く無駄。力強すぎ、
初手に利き手封じるところが零さんらしい。
私はまた空いた左手で私の右手を掴む零さんの手を逆手に掴み、テコを使い剥がす。
しかし間髪入れず今度は左手首を捕まれ、上に挙げられる。今度は何も出来ず、零さんの胸元を力いっぱい押す。
『あ、や…零さん、無駄。私はこんな事されてもときめいたりしないよ、痛いだけ』
長い前髪で零さんの表情が窺えない。
『誰かと間違えてる。私は零さんの好きな人じゃない。部下、妹よ』
ね、零さん、零さん。そうずっと呼びかけていると、ちっと静かに舌打ちして、素早い手が動いた。
『…ん!』
いつかみたいに口を覆われ、両手は一纏めにされ上に挙げられる。……ほんと、何を考えてるの?
「いつ、誰が、FBIと仲良くしろと言った」
その低い声がまた私に向けられようとは。
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ウミ(プロフ) - やばい。感情移入しすぎて泣いてしもた。 (2021年7月18日 8時) (レス) id: a500a044fa (このIDを非表示/違反報告)
まな(プロフ) - !!!( ゚д゚)ハッ!!!!続きが気になります……!! (2020年12月22日 13時) (レス) id: b4debc2124 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘇澳 | 作成日時:2020年10月29日 23時