叶わない48 ページ13
もう涙目なんていわず、涙でぐしゃぐしゃになっている顔で、歩き慣れた道を駆けて行く。
『…っ、』
そして、キヨ兄の家の前で立ち止まる。
今度は、迷わずにインターホンを押した。
嗚咽を抑えられなくて、両手で口元を押さえながらドアが開くのを待っていた。
キヨ 「はい。……っ、A！？」
少ししてジャージ姿のキヨ兄が出てくる。安堵感で、余計涙が溢れた。
『…っ、ふ、ごめ、キヨ、にぃ……』
何とかそれだけ言うと、キヨ兄は慌てて私の腕を引き玄関に迎え入れてくれる。
キヨ 「…な、何あったんだよこんなに泣いて…」
キヨ兄のその優しい声を聞いたら、もう色々と抑え切れなくて、泣きながらその広い胸の中に飛び込む。
『…う…っ、』
キヨ 「…A？」
キヨ兄の腕が私の背中と頭に回って、優しく抱きしめる。
『…っ、ごめ、んねっ…あの、ひっ…ぐ』
何が喋らないと、謝らないとと思い泣きじゃくりながらなにか喋ろうとした時、キヨ兄が私を抱き締めて座り込んだ。
キヨ 「よしよし、落ち着いたら聞くからな」
とんとんと私の背中を優しく叩いてくれて、私も余計泣き虫になって、その首に手を回して抱き着いたのだった。
__________
『…っ、ふ……ありがとう。落ち着いた…』
キヨ 「そうか。水持ってくっから座って待ってろ」
頭をぽんぽんと撫でてから、そう言ってキヨ兄が離れて行く。私はと言うとリビングへ行って、静かにソファへ座った。
キヨ 「…そんで、何あったんだ。……つか、お前左頬赤くなってんぞ」
すり、とキヨ兄の細い指が左頬を滑って行く。
『…殴られた。最近仲良くしてた男の子いて、その子に、告白されて__』
そこまで言ってから口を噤む。
何やらキヨ兄からとんでもない殺気が……
キヨ 「…は？お前を引っぱたいたって事か？…誰だそれ、教えろ」
『も、もう大丈夫だよ…！大嫌いって言って来たし…』
キヨ 「…ぶん殴ってやれば良かったのによ…」
『…ふふ、っ…』
キヨ兄のその一言で思いっきり笑ってしまう。
さっきまでの震えはどこかへ行っていた。
やっぱり、流石だなぁ。ここは来て良かった。
キヨ 「…じゃ、落ち着いたら気をつけて帰れよ」
すぐ帰された。
何か、やっぱりキヨ兄変。
ひとつの悩みが消えて、新たな悩みが増えた一日だった。
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蘇澳(プロフ) - りぃ@l」ω=さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけてとても励みになりました^^*更新頑張りますのでこれからも末永くよろしくお願いします！ (2020年3月2日 21時) (
レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ@l」ω=(プロフ) - 一気に読ませていただきました！すっごく面白いですー！キヨさんのこと、もっと好きになっちゃった…笑これからも投稿楽しみにしてますね！早く続き読みたいー (2020年3月2日 21時) (レス) id: b3c6beb7e3 (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - しまちゃんさん» コメントありがとうございます！いつも皆さんに楽しんでもらえているか心配だったので良かったです！更新は変わらず遅いかと思いますが定期的に行うようにしますので、これからもよろしくお願いします！いつも読んでいただいてありがとうございます！ (2020年2月29日 22時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
しまちゃん(プロフ) - 初めて感想失礼します！楽しく読ませて頂いてます！次どんな展開になるのか楽しみで毎度読むのにワクワクしてます！待ち遠しくて最初から何回か読み返したりしました、、！ご無理のないよう、素敵な小説更新するの楽しみにしてます！ (2020年2月29日 20時) (レス) id: d2a5bc168d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘇澳 | 作成日時：2020年2月13日 20時
