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叶わない27 ページ34

涙が溢れて止まらない。


何で、こんな事に……?


『……っ、ばか…そんな言葉が欲しかったんじゃないのに…』

さっきのキヨ兄の、“良かったな”って言葉。

どうしてもキヨ兄からその言葉は聞きたくなかった。


キヨ兄の家にお世話になる時あんなに嬉しそうな顔してたのも、早く来い、なんて言ってくれたのも、凄く嬉しかった。

だけど、キヨ兄は簡単にそれを手放せるの…?

あれは、嘘だったの…?


『っ……ふ、うっ…』

嗚咽が漏れ、顔は涙でぐちゃぐちゃ。

でもそんなのお構い無しに、どこか人気の無い所を探し回る。


ある、小さな公園を見かけ人がいないことを確認すると、その中のベンチに一人腰かける。

ここでやっと、酷い顔の始末が出来た。


携帯がちかちかと光を放っているのが分かって、慌てて取りだしてみる。

キヨ兄からかもしれない、と思ったが、表示されていたのはお母さんの文字で、上がった熱が一気に冷める。

少し息を整えて、電話に出る。


母 「もしもし、A?」


『…うん、どうしたの』


母 「キヨくんから話行ったでしょう?…何なら早い方がいいと思って来週くらいを予定としたいんだけど」

来週……


『…私、わがままを言えば、キヨ兄の家まだ出たくない…』

まだ、出たくないよお母さん。
折角、キヨ兄と近付けたのに。4ヶ月ぽっちでもう離れるなんて…

会えない訳じゃないけど、離れたら、親戚って言葉に負けそうで……


母 「それは駄目ね、A」

もしかしたらため息をついて許してくれる、そんな甘い期待がお母さんの低い声とその言葉で掻き消される。

目の前が真っ白になる。


『どっ、どうして…!』


母 「あのねA、お母さんAの気持ち知ってるよ?キヨくんが好きだって事。…でもね、こればっかりはどうしようも無いの」


『……どういう事…?』




母 「キヨくんね、彼女さんいるのよ」




『…………』

一瞬、耳を疑った。

全身が泡立つ。一気に体が冷めて、指先が震える。


母 「最近キヨくんのお母さんと飲んだのよ。そうしたら、そんな話を聞いたの。だからA、」


キヨくんは諦めなさい



分からない。

お母さんも、キヨ兄も。




私は今日、好きな人と家を、一度に失くした。

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蘇澳(プロフ) - けろさん» コメントありがとうございます!とても励みになりました!お目に入れて頂き光栄です!これからも更新がんぱりますので宜しくお願いします^^ (2019年8月30日 16時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
けろ(プロフ) - 初めまして!毎回更新を楽しみにしています(^^)居候生活編も楽しみに待ってます笑小説書くのは大変だと思いますが応援しています! (2019年8月30日 12時) (レス) id: 2aaeade905 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘇澳 | 作成日時:2019年8月12日 23時

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