妹、誘拐される ページ16
「な、何をなさるんですの!離してください!」
必死に手を振り解こうとする。
だが、なかなか解ける兆しも見えない。
諦め、男に連れ去られる事にした。
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遅ェな。
何とか伊集院と話は持たせてるが、肝心のAが帰ってこねェ。
「花幡さん、先程からそわそわしておりますが、どうかなされたか?」
「あ、いや……色が帰ってこないと思いましてね」
「ああ……確かにその様ですねぇ、何かあったのでしょうか…」
「俺は色を探してきますので、それでは…」
「ええ、私も探してみますよ」
「ありがとうございます」
会話が終わるや否や、焦っていると思われないよう早歩きで会場を回る。
「あ、あの」
不意に女に声をかけられる。
「何でしょう」
「御一緒に踊りませんか…?」
女は恥ずかしそうに、俯きながら話している。
「申し訳ないが、俺には想い人がいてな。一緒に踊ることは出来ない」
ん?此奴、どっかで見たか?
と思った時には、泣いて去っていった。
まずAを見つけねェと…
何処にいンだよ、A………!
________________
「ん…………」
目を開けて見ると華やかな会場とは反対に、冷たい床に座らされていることが分かる。
腕は縛られ、目隠しもされている。
だが、先程からがやがやと大勢の人の声が聞こえる。
「それでは、本日のメインのお披露目でございます」
司会の男が妙に声を張り上げて言うと、ガラガラと音がする。
目隠しが外された。
そこに広がっていたのは___
「なんと言っても一番良いのが、この綺麗な青い瞳。なんとも宝石のような瞳でごさいます!愛玩用にするも良し、観賞用にするのも良し、あらゆる事にお使いいただけます!さあ、買った買った!」
そうか、ここではパーティーで捕まえた女を売り捌いているのね……
どこを向くこともできず、俯いていると__
どん、と灯が落ちた。
客はどよめき、スタッフ達も慌てる。
「ちっと、静かにしてろ。怖くねェから」
ひょい、と浮いた感覚がしたと思えば、すぐさま灯が戻る。
既に、客の休憩所みたいな所に連れられた私は、兄に抱き縋った。
「兄、ありがとう…」
「探したんだぜ、すげェ」
それがありありと分かるように、兄のスーツは少し汗ばんでいる。
「いやァ、良かったね。Aちゃん連れ出せて」
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作者名:蘇澳 | 作成日時:2018年4月7日 2時