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「ちょっといいかなAちゃん」
黒い裏側が見え隠れする猫なで声に呼ばれ、オフィスを抜け空いた会議室のひとつに入る。
『…オフィスでは出来ない話ですか、西条さん』
「えぇ、もちろん」
何だと思っていれば手渡される書類。
…やっとけってこと?と思い目を通すも、何やらそういう訳でもないようだ。そして文のひとつの単語を声に出す。
『…潜入、』
「えぇ、上層部からね。探って欲しい組織がいるそうなの、適任を選んで執行させろとの事だったから」
私を選んだってこと。
ぺろと二枚目以降にさっと目を通していくと、
『この組織って…』
裏社会を牛耳っているとも噂されているとある組織。零さんが潜入している所とはまた別の。
『この前まで潜入はまだ危険だと言われていたじゃないですか。それに、期間無期限とは…』
「制圧が済むまで居てもらうわ、上の判断よ私に言わないで」
う、まぁ確かにそうですけど。
私に、こんな大層な任務が何故…
「あぁでもその組織、組員の召集は月に何日か。そこまで縛られるわけじゃないからまだ良い方でしょ」
『…私が受けなければ__』
「あ、そんなの考えるだけ無駄よ。君に決定権は無いわよ」
『……』
黙って俯く私の肩をぽんぽんと乱雑に叩くと、じゃあよろしくなんて言って去る西条さん。しかし去り際に
「そうそう、零くんには報告しなくていいから。私だけに報告して」
遂に西条さんも、公私混同の域にまで達したかと密かにため息をついた。
_______
家に帰り、父に潜入捜査の件を通し水を被って、タオルを貰い顔を拭いながらリビングに顔を出してみる。
とそこには意外な組み合わせが
「あらA。派手にやられたのね」
「……」
優雅にベルベットのソファに身を沈める、亜弥姉さんと一輝兄さん。何か話しでもしていたのだろうか。そのまま見て見ぬふりしようかと思ったのに、
「A、座れ」
一輝兄さんに着席を促され、うん、と座れば私の手からタオルが奪われる。
「…水か」
ひたりと私の頬に触れてそう呟く。ついでわしゃわしゃと拭かれる。
『ちょ、兄さん』
「暴れるな、拭き辛いだろう」
そう言われたので大人しくされるがままにしていると、くすくすと柔らかい笑い声が
「ほんと、兄さんはAに甘いわね」
「うるさい」
急に怖い、この兄妹。
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莉子(プロフ) - 一気読みさせていただきました!!!面白すぎて禿げそうです…更新楽しみに待ってます!! (2022年4月2日 15時) (レス) @page9 id: e12f476466 (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ(プロフ) - とうとう降谷さんにバレちゃった?(゜ロ゜)主人公ちゃんもだけど無理やり任務をさせてる西条さんの方がめっちゃ怒られるでしょうね、早めに言っちゃうけど西条さん自業自得だけど御愁傷様です(^∀^;) (2021年11月10日 19時) (レス) @page9 id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ(プロフ) - うわぁ、無理やり自分に回ってきた潜入捜査の仕事を押し付けておいてこんな態度?(°Д°)降谷さんに知らせずに主人公ちゃんに自分の仕事を無理やり押し付けてるのを降谷さんが知ったら西条さんに何やってるんだって大激怒でしょうね(笑)(´▽`;)ゞ (2021年10月15日 2時) (レス) @page6 id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
ウミ(プロフ) - 楽しみにしてます。 (2021年7月18日 9時) (レス) id: a500a044fa (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ(プロフ) - 名家の出のお嬢様でも降谷さんは容赦ないでしょうね、大好きな婚約者の降谷さんからどんな仕打ちをされるか楽しみです(笑)(-∀-)更新楽しみにしてますね(*≧∀≦*) (2021年2月16日 0時) (レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘇澳 | 作成日時:2021年2月4日 22時