夢 ページ35
「やっちまえ灰崎！」
暴れるAを、灰崎の容赦ない正拳突きが襲う。
「かっ………………は………」
背後でAを拘束しているヒロトのせいで、倒れる事も叶わない。
ギャラリーは沢山いるけれど、誰も彼も見てるだけ。
「鬼道さんにあんな事をしたし………」
「豪炎寺さんにも怪我させたし………」
「当然の報い」
「アイツは暴力以上の事をした」
「もっとやれ」
今度は灰崎の右フック。
口の中が切れて、鉄の味が広がる。
それで満足したのか、ヒロトの拘束が解かれてその場に崩れ落ちる。
周りにいる全員がAを嘲笑う。
裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者。
「違う………私は………！」
裏切り者！裏切り者！裏切り者！裏切り者！裏切り者！
「裏切り者じゃ………！」
裏切り者！！！裏切り者！！！裏切り者！！！裏切り者！！！裏切り者！！！
「裏切り者には裁きが必要だ」
どこからともなく現れた鬼道が笑う。
「裏切られた側の苦しみ………とくと味わうがいいさ」
Aの足元が沼に変わり、ズブズブと沈んでいく。
抜け出せない、抜け出そうともがけばもがくほど沈んでいく。
「違うの………裏切り者じゃ…………………」
顔を上げ、訴えるが誰の耳に届くこともなく。
ただニヤニヤと沈みゆくAを見ているだけ。
ただ、ただ、裁かれる罪人をニヤニヤと。
「ちが………う……………」
遂に顔まで沈み、視界が暗転して呼吸が出来なくなる。
苦しい、呼吸が、苦しい。
暗くて、寒くて、寂しい。
「それが裏切り者の末路だよ♡」
誰かがそう呟いた。
「っ！」
ガバッと身体が起きて、辺りを見渡す。手をグーパーしてみたり、瞬きを何回もしてみたりしてこれが現実である事を確認する。
「ゆめ…………？」
頭からバケツをひっくり返したみたいに嫌な汗をかいていた。
夢で良かったと思う反面、もしかしたら正夢になるかもしれないと怯える。
自分がオリオンに堕ちたら、ああなるのかもしれない。
一星以上に仲間を欺き続けた罰が下るかもしれない。
時刻はまだ午前２時。
起きるには早すぎる時間だが、夢の続きを見たらと思うと怖くて眠れず。
ベッドを下りて身支度を整えると、部屋を出た。
灯りがひとつもついておらず、真っ暗だったが電気をつけずにそのまま歩いた。
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作者名：くつる | 作成日時：2020年3月15日 3時
