基山 ページ24
Aside
「A！朝見かけなかったから心配したぞ」
「寝坊しちゃって…………」
「ちょっと気が緩んでるんじゃないか？………でも、その髪型は似合ってるぞ」
と適当に結わえただけのポニーテールを褒められる。
「おい、早く練習すんぞ」
痺れを切らし、少しイラついたように吉良先輩が言う。
「ああ。Aももちろん、やるよな」
「皆さんさえ良ければ」
「構わん！さあ、撃ってこい！俺を楽しませろ！」
フハハハと笑い声をあげる砂木沼さんは、ついこの前タツヤに「真面目にやれ」と注意されたのをまるで覚えてないみたいだ。
それが彼らしいといえば、そうに違いないけれども。
お望み通り、タツヤから貰ったボールをゴールに向かって蹴りこんでやると勢い良くパンチングで跳ね返してきた。
跳ね返ったボールは丁度いい具合に私の足元に静止する。
砂木沼さんの高笑いが練習場に響く中、「いいぞ！その調子！」と褒めてくれるタツヤ。
「退け、シュートってのはなァ…………こうやるんだよ！」
後ろにいた吉良先輩が突然ボールを蹴ったものだから、当たりそうになったのをギリギリで避けた。
自信満々だった吉良先輩のシュートはネットを揺らすことはなく、砂木沼さんの手元にすっぽりと収まった。
「チッ…………」
「フハハハ！！！まだまだだな！」
たまたまにも見えたが、得意気な砂木沼さんを前にしてそんなことは言えない。
それからは基礎練をしたり、休憩したり、基礎練したり基礎練したり…………色々やった。問題なのは、私が何かする毎に「今のパス良かった！」だとか、「フォームが綺麗だ！」とかタツヤが褒めてくれる事だった。
褒められること自体は嬉しいのだが…………。
「A！今」
「だぁぁああ！もう！うるせえ！どんだけそいつの事褒めちぎりゃ気が済むんだよ！？」
タツヤの声を遮り、吉良先輩は私を指さしながら尖り声を上げた。
吉良先輩に怒られたタツヤはすっかりしょげてしまって、その後練習時間が終わるまで口を開くことは無かった。
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作者名：くつる | 作成日時：2020年3月15日 3時
