掴み取れるものならば【ヒロアカ】 (ページ4)

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四話ページ4

荼毘side

薄暗い路地の中、空は月明かり差し込むほどに晴れ、星は煌めくが色は鈍い。まぁ田舎ならともかくここは都会の只中だ。どれだけの人間が寝ようとも、この街は明るいまんまで気が滅入る。
それに比べて目の前のやつは今にも消えてしまいそうなほどに、＂黒い＂。言葉のまま、何らおかしな謎かけもなく、ただひたすらに目の前のやつは黒いのだ。

しかし…もう何十分も歩き続けているが、一体ここはどこだ。

さっき俺は確かに東京の見知った街中を歩いてた。ここいらの道も街並みも大体覚えてるから、わかる。

「おい。ここ何処だよ」

ずっと鳴り響いてた車のエンジン音も風を切る音も、人の話し声も歩く音も、気づけば何の音もしない路地に迷い込まされている。
こいつの個性のせいか？
発動がわからないタイプの個性はいくつもあるが、だとしてもここまで何の音沙汰なく人を連れて、しかも迷わせるなんざかなりの手練れだ。

いつも通りチンピラ相手に個性振り撒いてたら、路地の奥から血塗れの人間が現れた。それがこいつで、面白そうだと付けてみれば、気づけばここまできてたってわけ。

どれだけ足音立てようが、姿を見せて声をかけようが無反応。しかしようやく反応したかと思えば動作だけ、どんな人格してんだこいつ。

「聞いて「お前、轟燈矢か」」

「……人の話を遮っといて知らない奴の名前出してんじゃねえよ。質問に答えろ、ここは、何処だ」

「轟燈矢。確かどっかの山で、個性の暴走による火事を起こして顎の骨だけ見つかった小僧だろう。なるほど、ずっと焦げ臭いと思ったら、母親の体質を引き継いで父親の強い火力を曖昧に同居させてるのか」

何とも哀れで悲しいやつだな。

「…あ？」

何でこいつは俺の名前も、個性も、体も、家族も知ってんだ。血まみれの外套をそのままに真っ黒な姿をしたそいつは、おそらく笑っている。
何がおかしいかは知らないが、今俺は不利な状況に立たされていることは確か。おそらく見るからに知っているのは俺の素性だけじゃない。
何処かしらからのコネでこいつは動いてるんだろう。

つまり組織に属した誰かだ。

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