掴み取れるものならば【ヒロアカ】 (ページ2)

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二話ページ2

？side

血塗れになった手元を見て、それから周囲に目を凝らす。飛び散った血はいま目の前で始末した男、〈表(フロント)〉在住だった家庭を持っていたであろう彼のもの。

壁一面床一面、血の海、血の滝だ。

何十万回とこの光景を見たが、もう何も感じなくなり始めてるのはかなり悪い兆候だろう。周りにはこいつと同じことをした連中が同じように血だらけで倒れている。そばには同じ組織のメンバーが複数立っており、片手には各々の獲物が握られている。

バーカウンターの奥に避難していた店主はハンカチで頬に張り付いた血を拭いながら、棚の下に手を差し込む。獲物をしまって歩み寄り、棚の下から引き出された札束を手に取った。

「今回はまぁ随分と派手だな。処理はもちろん？」

「ああ、いつも通りウチが請け負うよ。代金はこれから差し引いてくれと上から言われてる。これはいつも店を使わせてくれる礼金だ」

「そりゃどうも。ボスは元気か？最後に会ったのはひと月も前だぞ。また話したいと伝えてくれ」

「…」

僅かな沈黙。
店主の話題で店内は静まり返り、全員が顔を伏せた。

「……まさか、悪化したのか」

「…昨日の夜九時半ごろに警備が異変を察知して、浴室に向かったら倒れてるのが見つかった。どこも負傷はしてないが、おそらく病状が悪化してる」

額に手を当て、自分を落ち着かせるように口元まで下げる。年老いた骨張った手に皺だらけの表情はとても落ち着いているようだが、目の奥には不安と悲しみ、なによりも嘆きがあった。
数秒の間を開けて彼は静かに問う。

「医者は？」

「〈裏(リバース)〉の連中は信用ならん輩が多いが、腕はある。しかし〈表(フロント)〉の連中は信用なるが腕はない。だから探してる」

「〈狭間(ギャップ)〉の人間なんてそうそう見つからないぞ。果てはサツに見つかって終わりだ」

探しているのが〈狭間(ギャップ)〉の人間だと知れば、彼はその辺りには手を出すなと引き留めてくる。自分が〈狭間〉の位置にいる人間だからだろう。
しかしそれ以外に手立てがないと説得を試みる。

彼の説得に失敗すればもう当てがない。
これが最後のチャンスだ。

「アンタなら〈表〉での仕事上、何万という人を観察できる。どうにか〈狭間〉の人間を探し当ててくれないか、医者じゃなくてもいい！なぁ、頼むよ」

後生だ。

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