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六話 ページ6

伏黒side



『お前が恵か』


突然現れた男は特になんの表情を浮かべるでもなく、俺の数倍もある背丈を丸め、じっくりと品定めする様に見つめてきた。
学校の帰り道のことだ。
家まであと十数歩のところで、この男が頭なく現れて名前を聞いてきたあたり、この前の白髪の男の様にタチが悪い。

でも、なぜか不審がることができなくて。

ランドセルの肩掛けをギュッと握りしめながら、相手の名前を聞き返す。


「あんたは」

『俺かい。俺はお前の親父の弟だ。安心しな、別に売り飛ばしたりしねぇよ』

「父さんの…じゃあ、俺の叔父さん?」

『おうともさ。そういや、こないだ白髪頭のグラサン野郎が来ただろ』


実際に起きたことを問われ、そのまま頷く。
軽くため息をついて、ニィッと笑う叔父さんはどこかで見た覚えがある。なんだろう、知ってるんだ。

俺は知ってるんだよ。
その顔を。


『あんましあいつの事は信用するな。頼りもするな。これからの事は俺がどうにかしてやるし、バケモノからも守ってやる。津見紀のことも』

「アレが見えるの」

『見えるさ。お前と同じじゃないが、同じではあるから』

「じゃあ、叔父さんが俺たちを育てるのか?」

『豪邸に住まわせてやる。腹一杯食わせてやるし、好きなものも買ってやる。我儘も聞いてやるが…その前に一つ約束できるか』


自然に首を傾げて見せれば、すごく優しい笑みを浮かべてこう言った。


『強くなれ』


まっすぐな目は綺麗な翡翠色で、角度によって色を変える。鋭い視線でありながらも、どこか優しさと愛しさを含んだそれに、俺は、ゆっくりと頷いた。
理由は知らない。
動機もわからない。
でも、頷きたかった。

この人について行ってみたくなった。
新しいものを見せてくれそうで。
たくさん教えてくれそうで。

期待したんだ、俺。

ニィッとまた口角を上げた叔父さんは、ガシガシと頭を撫でる。すとん、と胸の奥に何かが落ちてきて、俺の目元をくすぐった。
鼻先がつんとして、耳と目元が熱くなる。
手を強く握りしめ、歯を食いしばり。

あふれる涙をそのままに。

広げられた手で、叔父さんは俺を抱きしめた。



.

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ツバメ - なんか甚爾が居ないのを前提にしてるからそこは凄くさびしいけど、彼女の意思と決意が強すぎてつい本人みたいに引き込まれてしまいそうです (2021年7月27日 23時) (レス) id: e61b67cd9c (このIDを非表示/違反報告)
黒野麻陽(プロフ) - クレイさん» 応援ありがとうございます、期待に応えられるよう精一杯やります!! (2021年3月11日 20時) (レス) id: 53793cef18 (このIDを非表示/違反報告)
クレイ(プロフ) - 続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年3月11日 20時) (レス) id: a6777d967f (このIDを非表示/違反報告)
黒野麻陽(プロフ) - てる。さん» コメントありがとうございます!できるだけ面白く書けるように頑張ります!! (2021年3月5日 15時) (レス) id: 53793cef18 (このIDを非表示/違反報告)
てる。 - 話の中に凄い引き込まれました。一言ではいい表せませんが、言葉が見つからない…!更新、楽しみに待ってます。 (2021年3月5日 14時) (レス) id: 5ec2a8a618 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒野麻陽 | 作成日時:2021年2月17日 22時

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