四十八話 ページ48
云須side
携えた刀と体の間に手を置いて、肘置きにするようにして少し身を緩めた。上から目線で話せば連中頭に血が登ってすぐに立ち上がるだろう。直毘人の隣には真希の父親である扇、そしてその隣には奴の息子たる直哉。
で、扇の隣にいるのが…
『お久しゅうございます、甚壱兄上。不束な妹が兄のガワを被り戻って参りました。お変わりないようで大変安心いたしました。何せすでに我が兄はあなた様お一人のみ…心の端で身を案じておりました』
「…ふん」
礼を尽くせばそっけない態度。
しかしとくに興味も示さず、挨拶はほどほどにしておく。甚壱兄上くらい味方でいて欲しいと思うことはある、流石の俺でもね。
味方は多い方がいいとはいえ、ここの連中なんぞに期待はしないが。
甚壱兄上はまだ信じられる…とは思う。
ともかく、目の前の御当主様を怒らせてみないとな。
「ははは、云須さんもおもろいこと言いはりますね。次の当主は俺やのに」
『五条の坊主に気圧された餓鬼は口を出しなさんな』
ピシリと固まる直哉を他所に、視線を直毘人へと常に視線を注ぐ。
「復縁しろ」
『断る』
「縁りを戻せと言っている」
『古くせえプライドを守り続ける手前の見えすいた企みなんぞに、乗る気はない』
かなり頭にきているがギリギリで押し留めているらしい。一瞬で目の前に移動してくる直毘人に、目を細めてより鋭い視線を向ける。
額に筋が浮かび、拳には力が入っている。
何とも愚かしいことよ。
これだから。
『年寄りの戯言は困る』
「縁りを、戻せ…！！」
『はっ！くだらねぇ』
枷が外れたように手を振り上げた。
しかし腕が降りてくることはない。
俺の中に宿る八岐大蛇が睨みを効かせたから。
ただならない気配に慄いたらしい直毘人は、わずかに距離を取る。刀に手をかけている達己たちを御し、視線をそのままにより強く気配を溢れ出させる。
『ほら、どうした』
『やってみろ』
「ッ…貴様、その腹の中に何を飼っている…！」
言葉に答えず、笑みをたたえたまま動きを待つ。
周囲の男どもは怯えきって話にならないが、流石に特別一級呪術師…扇と甚壱兄上は顔を歪ませただけで済んでいる。
直哉は…固まりきっているが。
.
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ツバメ - なんか甚爾が居ないのを前提にしてるからそこは凄くさびしいけど、彼女の意思と決意が強すぎてつい本人みたいに引き込まれてしまいそうです (2021年7月27日 23時) (
レス) id: e61b67cd9c (このIDを非表示/違反報告)
黒野麻陽(プロフ) - クレイさん» 応援ありがとうございます、期待に応えられるよう精一杯やります！！ (2021年3月11日 20時) (レス) id: 53793cef18 (このIDを非表示/違反報告)
クレイ(プロフ) - 続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年3月11日 20時) (レス) id: a6777d967f (このIDを非表示/違反報告)
黒野麻陽(プロフ) - てる。さん» コメントありがとうございます！できるだけ面白く書けるように頑張ります！！ (2021年3月5日 15時) (レス) id: 53793cef18 (このIDを非表示/違反報告)
てる。 - 話の中に凄い引き込まれました。一言ではいい表せませんが、言葉が見つからない…！更新、楽しみに待ってます。 (2021年3月5日 14時) (レス) id: 5ec2a8a618 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒野麻陽 | 作成日時：2021年2月17日 22時
