四十四話 ページ44
明一郎side
「で、上手いこと言ってやったわけですか」
『さほど手はかからんかったさ。連中が馬鹿で助かった』
「ははは!そりゃ楽だ」
肉が焼ける音、油と血が焦げ腐る匂い、骨の軋む感覚が手に伝う。こういうのにはいい加減慣れろというものだが、そうはいかないのが人間だ。
ギチギチと締め付ける音と摩擦音を奏でるのは大蛇の影。俺の持つ四番の刀から流れ出る影が、型を取り、一生懸命に云須の腕を接合している。
普通の人間であればとうの昔に気を失うほどの痛みだが、この人は感じない。
俺たちはまだ人だ。
しかし彼女はすでにその枠を越えさせられている。
なんとも難儀な人生よ。
「しかし、俺もあんたも歳をとったな」
『お前は昔から顔が変わらねえけどな』
「これはこれで困ってんだよ」
『はは、どーだか』
腕を接合する間に首回りにタオルをかけ、用意していた鋏で艶やかな髪を切ってゆく。伸びたと言ってもほとんど変わっちゃいないが、散々な尋問でボロボロなのは確か。だから整える程度だ。
『…』
「何か思うことでもあんのかい」
『いや、辛いと思ってね』
「今更だろう」
らしくない。
いつもなら簡単に笑い飛ばすだろうに。
「迷ってんのか、後悔してんのかどっちかにしな」
『辺な気分だよ。自分から引き剥がしたはずの人生を、何でか知らないが手繰り寄せてしまってる。子供のためだ何だと難癖つけといたはずなのに、結局はやりたいことを優先してた』
「呪いにかかわるとろくなことがねぇのは、みんな承知の上だろう。それを運命やらのせいにすんのかい」
『兄さんが死んでから何ひとつうまくいった試しがないよ』
口調が昔のものに戻っているのは、俺だからで、気を許している時しか出ない。たぶん、もう疲れ始めているんだろう。一人でいることそのものに慣れたとは言いがたく、ただひたすらに演じ続ける日々に、飽き始めたはずだ。
もうやめてしまえ。
そんなことは言ってやれない。
何せこいつが始めたことだからだ。親でも何でもない俺が言っても、こいつは罪悪感を感じるだけだろうし。
何よりも、悲しみに明け暮れてしまうだろうから。
甚爾を失ってからというもの、云須は見るからに衰弱し、食欲も薄れ続けていった。今だってほとんど何も食べない生活を続けてる。
何かきっかけがあれば、変われるはずなんだがなぁ…
.
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ツバメ - なんか甚爾が居ないのを前提にしてるからそこは凄くさびしいけど、彼女の意思と決意が強すぎてつい本人みたいに引き込まれてしまいそうです (2021年7月27日 23時) (レス) id: e61b67cd9c (このIDを非表示/違反報告)
黒野麻陽(プロフ) - クレイさん» 応援ありがとうございます、期待に応えられるよう精一杯やります!! (2021年3月11日 20時) (レス) id: 53793cef18 (このIDを非表示/違反報告)
クレイ(プロフ) - 続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年3月11日 20時) (レス) id: a6777d967f (このIDを非表示/違反報告)
黒野麻陽(プロフ) - てる。さん» コメントありがとうございます!できるだけ面白く書けるように頑張ります!! (2021年3月5日 15時) (レス) id: 53793cef18 (このIDを非表示/違反報告)
てる。 - 話の中に凄い引き込まれました。一言ではいい表せませんが、言葉が見つからない…!更新、楽しみに待ってます。 (2021年3月5日 14時) (レス) id: 5ec2a8a618 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒野麻陽 | 作成日時:2021年2月17日 22時