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三十三話 ページ33

五条side



ゆったりとした足取りで少し前に出てくる彼女に、僕も応えるように足を踏み出す。
そばに居た術師にも彼女と同じように言葉をかけた。
だが、上から差し向けられた術師ゆえか、僕の言葉に反対するように抗議してくる。


「何故です!?あの部下を始末してしまえば…」

「じゃあ君にはさっきの惨劇が見えなかったわけ」

「そ、それは」

「ああなりたいならどうぞ?彼らの剣技は確実に特級クラスだ。君たち程度の術師なら、足を踏み出す前にお陀仏だよ。わかったら黙ってそこに居てよね」
「君らはせいぜい僕の邪魔にならないよう、立ちまわっておけばいいんだから」


カツカツと靴底の音がこだまする。あの写真を見たせいか、今の彼女の顔がわずかに崩れて見えることに気がついた。
どうやら顔を知られている人間には素顔が見えるようだ。から彼らにも素顔が見えているんだろう。僕は学生時代の彼女の素顔しか知らないから、まだ完全に術が剥がれないらしいが。


『で?わざわざ嫌いな上からの呪術師を引き連れて、何の用だ。俺のチャンスを無駄にしてしまいましたってか』

「…貴女のことは調べさせてもらいました。まさか禪院家の特級呪術師だったとは、驚きましたよ」
「禪院云須、伏黒甚爾の妹…いずれは当主にすらなれたであろう人材」

『なるほど。始末しにきたと』

「いいえ、捕らえろとの仰せですよ」

『ふははははははははは!!!!』


いきなり笑い出す彼女に面食らったような顔になってしまうが、見えないのでよしとして。
何故いきなり笑い出したのか理解できない。

楽しいから?いいや違う。

たぶん、僕と戦えると思っているからじゃないだろうか。そうでないならどうなのだろう。ふと、笑うことをやめた彼女がこちらを見据えた。


『捕らえろか、そうかい。連中は俺をよほど求めているらしいな。くだらねぇ…なら捕まえて見せろ。そうすりゃわかる。お前が首を取られるのが先だってな』


刀を引き抜いて音が鳴るくらいに握りしめると、彼女の体に異変が起き始める。
握り締められた右手の部分から、黒く艶やかな鱗のようなものが広がり始め、顔の半分を覆ってゆく。目の色が変色すると同時に完全に術が解け、素顔が晒された。



.

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ツバメ - なんか甚爾が居ないのを前提にしてるからそこは凄くさびしいけど、彼女の意思と決意が強すぎてつい本人みたいに引き込まれてしまいそうです (2021年7月27日 23時) (レス) id: e61b67cd9c (このIDを非表示/違反報告)
黒野麻陽(プロフ) - クレイさん» 応援ありがとうございます、期待に応えられるよう精一杯やります!! (2021年3月11日 20時) (レス) id: 53793cef18 (このIDを非表示/違反報告)
クレイ(プロフ) - 続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年3月11日 20時) (レス) id: a6777d967f (このIDを非表示/違反報告)
黒野麻陽(プロフ) - てる。さん» コメントありがとうございます!できるだけ面白く書けるように頑張ります!! (2021年3月5日 15時) (レス) id: 53793cef18 (このIDを非表示/違反報告)
てる。 - 話の中に凄い引き込まれました。一言ではいい表せませんが、言葉が見つからない…!更新、楽しみに待ってます。 (2021年3月5日 14時) (レス) id: 5ec2a8a618 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒野麻陽 | 作成日時:2021年2月17日 22時

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