空っぽの暗殺者【 ONE PIECE 】 (ページ28)

今日:11 hit、昨日:8 hit、合計:20,025 hit

２８話ページ28

カタクリside

ママからのお叱りを終えて、女王の間を去り、今は俺たちの部屋で一息ついたばかり。しかしロズはというと、先ほどママを怒らせたばかりだというのに微塵も気にすることなく、書類を手に頭を抱えていた。
八つ当たりとも言われんばかりの仕事量に、流石のロズも天を仰ぐほかないらしい。一口紅茶を喉に流し込み、また書類に視線を戻す。

「お前は本当に畏れ知らずだな。俺の方が肝が冷えたぞ」

『このくらいいつものことでしょ』

「だからって、ママをわざわざ怒らせる必要などないだろう」

『来るまでに色々あって誤魔化す時間が必要だったんだ。いちいち説明してたら、それこそママに首を飛ばされる』

それもそうかと仕方なく納得して、新しく菓子をカゴに入れてやればそっと手が伸びる。書類に目を通してはサインをして、訂正があれば付箋を貼り、判子を押してゆく。
ああ、そういえばと口を開くと同時に部屋の扉が三度叩かれた。

『どうぞ』

「失礼します。局長、本部より通達が」

『…何と？』

尋ねてきたのは彼女の部下、シビック・エドロンド。
左目と左腕を失った歴戦の老兵であり、元サイファーポールイージス０のエージェントだった男。男でも綺麗だと思うプラチナの髪は頸のあたりで緩く纏められ、髭はきっちりと切り揃えられている。
同じく部下であるカンヴィルから聞いた話だと、どうやらあの髭と髪はロズが整えているらしい。それを聞いた日の俺を見て、ペロス兄とコンポート姉から笑われたのは言うまでもない。

問われた内容に対し彼は深くため息をついて、メモを差し出した。

『…は。よく言う。自分たちだけでは何もできないくせに』

「マリージョアとはどういうことだ」

『未来を視たなら分かるんじゃないの？五老星の管轄下に入っただけ、特に何ら変わったことはないよ』

「だからそういう大切なことを早く言えと」

『ママに密告するかもしれない。判断はそれぞれでしょうが』

要は俺の身を案じてのことだそうだ。
遠回しに言ってしまうのはいつものことだが、今回はなおのこと慎重らしい。

俺としては、あまり危険な道を歩いてほしくはないのだがな。

.