空っぽの暗殺者【 ONE PIECE 】 (ページ26)

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２６話ページ26

白ひげside

まさかここまでとは思わなかったが、実力は俺たちに匹敵する。おそらくいまここで息子たちが束になってかかっても、敵わないだろう。

脅威になり得るか？
なり得るとも。

だが、惜しい。

センゴクのところに置いておくのも、ビッグ・マムのところに縛り付けておくのも。何も写らない写さない瞳に、新しいものを見せてやりたい。
俺の悪い癖だ。
こう言う戦いだけを知る奴を連れて行ってやりたくなるのは。

「お前、俺と一緒に来ねえか」

「親父！？」

「旦那とビッグ・マムが許すんなら世界を見せに連れてってやれるぞ」

俺の言葉にロズは驚く素振りも、笑みも浮かべるわけでもなく、先ほどと同じ無表情でこちらを見つめる。面白みなどないと断言する自信があるように、こいつは「くだらない」と、そう言った。
梁に座る凪の小娘も俺の提案を鼻で笑いやがる。

『私は元々、ビッグ・マム海賊団にはコレクションの一つとして連れてこられた。本に閉じられてしまうのを阻止するために、彼女の息子と結婚しただけのこと』
『今更世界を見てなんになるんです。私の目には単純に汚らしい政治の世界が広がる、死の匂いと苦痛の漣が聞こえるだけの海としか受け取れません』

「白ひげ。あんたが我々に何を望んでいるかは知らないが……あんたが提案すること全てはおそらく私らにとっちゃ、くだらないことにしかならないよ」

私たちは死を刻まれた人間だ。
美しいとか、綺麗だとか、それが分からない価値観がぶっ壊れた奴ら。

その集まりが私らさ。

こいつらはただひたすらに訴えている。
自分たちはもう手遅れなのが分からないのか、こうしたのはお前たちだ…と。

ああ、そうさ。
お前らを生み出したのは俺たちだろうさ。

なにせ、助けられなかったんだから。

「たまに寄っていけ。酒を振る舞おう」

『次に会う時が戦争の前でないことを祈ります』

身軽に空を跳んで行くその姿はまさしくミンク族そのもの。しかし、どこか違和感があるのも確かだ。何がその違和感をもたらすのかは知らないが。

また会えるのなら、少しは変わっていればいい。
ほんのわずかでも美しいと思えるのなら。

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