空っぽの暗殺者【 ONE PIECE 】 (ページ24)

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２４話ページ24

ナミュールside

生きることを諦めているように感じたのは、きっと彼女の輝く瞳のせいだろう。
美しさにまず惹かれる黄金の瞳には、生気が感じられずただ目的のために動く人形のような虚無感を放っている。

親父はただ対等に話をするが、俺たちは常に警戒心を緩めない。けれど、俺はどうしてか彼女に親近感を覚えてしまっていた。

知っている匂いがする。
深い海の匂いだ。

差し込む日の光に照らされて光る泡のような儚さを持つ、そんな彼女と俺はどこかであっている。そう思ってしまうのだ。

「それを俺に話して何になる」

『先ほど言った通り、私は戦争に備えるためあらゆる手段を作り、駆使して今を生きています。これはその時のための準備の一つ』
『あなたを止めるための準備をしに来ただけのこと』

「俺を止めるだァ？力で止めるってのか、あまり調子に乗るなよ。小娘」

『私をどうお呼びになろうが構いません。ですが、もし止めることが出来なければ、確実にこの世は悪い方向へと進みます。あなたと言う障壁を打ち倒すことが出来ないのなら、ここへ来た意味などない』

左手をそっと後ろへと差し出し、その手めがけてコランが刀を放り投げた。漆塗りの鞘には星のように金と銀が細々と散りばめられ、美しい一級品に見えるその刀。

彼女がゆっくりと刀身を引き抜くと、その刃の色は黒。この世に十二工ある名刀の一つ…黒刀である。

まるで彼女自身かのごとき刀身は濡れているように美しく、鋼を鍛え上げた職人の技が素人でも分かる。
それほどまでに素晴らしい刀だ。
大きさを見るに刀種は大太刀、相当な長さを持つ。

「手合わせしようってのか、俺と。いい度胸だがテメェの問題も解決出来ねぇガキが、勝てると思ってんじゃねえぞ！！」

『＂その身は波で出来ている、心は泡(あぶく)となりて水面(みなも)に昇る＂』

「！」

周りが一瞬、海の中に見えた。
海面が映り込む水の底、泡がゆらゆらと儚く昇りゆく。

『＂優しさを忘れ、己を忘れた末に行き着く先は、さぞ骸にまみれている事だろう＂』
『＂如何様にもがき苦しもうとも、誰しもが手を伸ばすとも限らない＂』

ロズが言葉を唱えるたび、世界が緩やかな海の中のように見えた。

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