第7話 Part8 がん細胞 ページ28
× × ×
Aが去っていった後には変な静けさが辺りを包んだ。
赤血球であるAE3803番は、今までとは違った様子のAに戸惑いながら声を漏らしたのだった。
｢Aさん、行っちゃいましたね…。｣
｢きっとあっちもあっちで忙しいのよ。…さ、私達も後はコレを届けに行くわよ｣
｢は、はいっ！｣
ーー
一方、Aは…
『はは、やっぱ今日俺焦ってる…ｯ？』
今までこんなに走ることなかったよな、なんてしょうもない考えが頭を過ぎりつつ、例の爆発音が止まない廃墟へと向かう。
この場所に近づくほど。自分が何かを知ろうとしているほど、脳に霧がかかってはズキズキと痛む。
まるで何かを、隠しているみたいに。
＿それは自分でも、知ることが出来ない。
『あ、居るじゃん』
ーー
｢死ね！バグり野郎！！｣
ガキィンッと交わる刃物の音が、空中で交差する。
衝撃波に耐えきれずキラーT細胞は地面に投げ落とされた。
もう抵抗の由もない三人をよそに、がん細胞はふと昔の記憶を思い出す。
｢がん細胞が二人逃げたぞ！！｣
｢クソ！あのバグリ野郎共！｣
｢探し出して処分しろ！！｣
子供だった頃の自分が、何もしていないのに。生まれてきたばかりなのに。それでも自分たちを攻撃してくる免疫細胞達に逃げ惑う、そんな当時の記憶。
｢ねぇ、…僕たち…生まれてきたばっかりなのに、ｯ…殺されるのかな…？
コピーミスって…どういうことなんだろう…？｣
｢わ…、わかんないよ…！でも、とにかく一緒に逃げよう＿＿＿ッぐああｯ！！｣
｢お、おい！！｣
その掛け声に合わせて走り出した途端、仲間のがん細胞はつまづいて地面に転んでしまう。
自分が助けようとしてももう遅かった。キラーT細胞達の足音が近づいてきていた。
｢1人いたぞ！捕まえろ！！｣
｢あと一人だ！見つけ出してブッ殺せ！！｣
｢ｯ…｣
響く怒声に息を潜める。幸いなことに、これ以上自分を追いに来る気配は無く、ずるずると気が抜けたようにその場で脱力した。今までずっと一緒だったもう1人の友人、
そんな彼を…見捨てるしか、なかった。
ーー
｢"バグり野郎"だと…？、"殺す"だと…！？
こんの野郎…！！人を不良品扱いしやがって…！！
何様のつもりだお前らは…！！
なんで殺されなきゃならないんだ！！｣
第7話 Part9 がん細胞→←第7話 Part7 がん細胞
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
RYP！(プロフ) - 本当に筆折れたりしがちな作者の尻を引っぱたいてくれてありがとうございます!!そんなに楽しみにしていただけたなんて…。練ってはいるんですけどね、…筆が!!…｢コイツどーせ面倒くさくなってんだな｣って思ってやって下さい( ߹꒳߹ ) (12月25日 23時) (
レス) @page35 id: 4d2d529cd2 (このIDを非表示/違反報告)
なお(プロフ) - わっ…‼︎凄く嬉しいです...‼︎‼︎コメントした時点でもう更新ないかな、と思っていたのでまさかのサプライズ的で本当にもうサンタさんありがとうー！！！って感じでもう本当に嬉しいです😭💕 (12月24日 6時) (レス) @page35 id: edc1be7ede (このIDを非表示/違反報告)
なお(プロフ) - 黄色ブドウ球菌の更新楽しみにお待ちしております!!! (2023年4月23日 9時) (レス) @page35 id: a43bf613b6 (このIDを非表示/違反報告)
凩(プロフ) - ヒ……APHの方から来たんですけどめっちゃ好きです…。 テスト勉強大変そうですが、負けずに頑張ってください…好きです……………… (2023年2月19日 22時) (レス) id: 6676e97410 (このIDを非表示/違反報告)
しょう - めっちゃ好みでした！続き楽しみです！テスト頑張ってください！ (2022年6月20日 23時) (レス) @page22 id: b8eda32ef2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：RYP！ | 作成日時：2022年5月21日 21時
