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人一年生6 ページ17

(加州は飼い猫、加州は飼い猫…)
 
ひたすら頭の中で念じながら、さささっと、忍者のごとく、無駄のない動きで服をぬぎ、バスタオルを体に巻く。
 
水瀬ひなこ「お風呂に入るときはね、男の人は布を腰に、女の人は胸元から巻いてお風呂に入るのがマナーです。」

加州「まなー?」

水瀬ひなこ「あ、礼儀作法?ってかんじの意味。」

加州はああと納得すると、いった通り、布を腰にまく。

私はというと、視界の端に加州の裸体が見えてしまい、ひたすら念仏を頭の中で唱えて気を紛らわしていた。


水瀬ひなこ「よ、よ〜し。行こうっか!」

加州「うん。」

加州の支度もととのったので、私はお風呂セットを抱えて、少しぎこちなくも風呂場に向かう。

ガララと木製の引き戸をひらくと、湯気がモワッと顔にあたる。
温泉特有の硫黄の匂いがした。

水瀬ひなこ「はい、まずは、体を洗うよ。そこに座って。」

入口のすぐ側にある洗い場を指差す。

加州のとなりの洗い場に、私も座った。

タオルと石鹸を渡して、泡立てて体を洗ってみせる。
 
水瀬ひなこ「こうやって泡立てて、ゴシゴシ洗うの。うんうん、そうそう。」


加州は人としての生活にまだ慣れてないけど、要領はいいみたいだ。
私が一度いったことはすぐにできるし、忘れないみたい。
 
そうして素っ裸で洗い方をレクチャーしてるうちに、最初の緊張はほとんど無くなっていた。
加州が全く気にしないという感じだったのも要因としてあるのかも。
 

お風呂にゆっくり浸かる頃には、もう加州との間に初対面特有のぎこちなさは無くなっていた。

 
なんせ、裸の付き合いというのをしたのだから。

加州「はー…。」

加州はお湯につかって気持ちよさそう。

❲主人公)「ふあ〜〜。寒かったから体に沁みるって感じ。」

私も存分に温泉を楽しむ。
夜空に沢山の星がまたたいていて、とても綺麗だ。
私はぼーっと眺めた。


(今日はほんとにとんでもない日だったな…)
 
こんのすけと出会った場面から振り返って、大きなため息をつく。
 
最初はすごく警戒した。
怖かったし、不安でいっぱいで、逃げたかったし、こんのすけを盛大に恨んだ。
恨みが消えたわけじゃないけど、今はすこしその緊張が和らいでいた。

加州がいるから一人じゃないし…。
予想よりもはるかに豪華な本丸に今日から住むことに不覚にもちょっとわくわくしてしまっていた。

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作者名:PANANA | 作成日時:2020年12月19日 8時

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