お見合い相手が泣き虫な金髪君だった

お見合い８ ページ8

A「私の顔になにかついてますか？」





私はその攻防戦に耐えきれず、我妻さんにそう尋ねる



我妻さんは、私に視線をよこしたと思えば、

勢いよく両手で自分の顔を覆った。





善逸「い、いや、その……綺麗すぎて目が合うと昇天しそうな気がしてっ！！


でも、見ないのも勿体なくて！！」




A「……そうですか」





見合い相手から『綺麗だ』と言われるのは慣れていた。


まあ、よくあるお世辞だ。



『綺麗だけど会話が続かなくて無理』とよく言われる。


まあ、私にとってこの『綺麗』は本音を和らげるための建前だ。



……でも、『昇天しそう』って言われたのは初めてだ。





善逸「うわぁ……本当、こんなに綺麗な人とお見合いできるだなんて。

爺ちゃんありがとう……っ！」




A「……」





我妻さんはそう言って、指を組んで天を仰いだ。




正直、驚きが隠せない。


私から相手に話しかけたのは初めてだし、

こんなに相手から『綺麗』を連呼されるのも初めてだ。



……不思議と胸が熱くなった。





善逸「あ、あの……ご趣味とかありますか」




A「任務ばかりでこれといったものは無いです」




善逸「そ、そうですよねっ！


あ、雨仁さんは階級が上だから、毎日忙しいですよねっ！

俺は凄く弱いので尊敬します……」





見合いでは定番の『趣味』を聞かれるが、

生憎私には趣味など無かった。



任務に行って、怪我をしたら休んで、

傷が治ったらまた任務。




我妻さんは不安げに視線を落とす。



自分を卑下して見ているその姿に、私は少し揺らいだ。


日本人は自分をへりくだって謙虚な姿勢をとる。

でも、我妻さんは……それが本音のように聞こえた。


自分の価値を過小評価して、決めつけているような気がした。





A「……今年の新入隊員は、五人も生き残り『優秀だ』と聞きました」





私は、そう零していた。

お見合い９→←お見合い７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す