お見合い相手が泣き虫な金髪君だった

お見合い４９ ページ49

私は救いたかった。



兄のように望まず鬼になった者を。


できるだけ苦しくなく、穏やかに逝かせたかった。




鬼殺隊に入り、鬼を斬るようになってから、

益々鬼を救いたい気持ちが強くなっていった。





『殺して下さい……もう、人を食べたくありません』





自ら首を差し出す者がいた。





『……私には、勿体ないほど、穏やかな死だ』





痛みの無い死に涙を流す者もいた。





『守りたかったんだ……大切な人を』





大切な人のために鬼になった者もいた。




確かに、本当に悪い人もいた。


でも、悪い人ばかりではなくて。




私の腕で誰かを救えるなら。





A「私はそれでいい」





私の目尻の朱は、『魔除け』だ。



鬼避けではない。


鬼だった人達が悪い物に憑かれることなく転生できるように、

兄の死をいつでも思い出せるように。




だから、私は毎日目尻に朱をさす。




兄の羽織は、私の誇り。



命よりも大切で、私の守るべきもの。





善逸『Aさん！』




A「！」





善逸さんの笑顔が浮かんで、私は目を開けた。



あれ……いつの間にか寝てたのか。

懐かしい夢を見たな。





A「羽織……」





私は立ち上がり、羽織を見る。



家の人に裁縫道具を借りようか、と思ったが、

ほつれは綺麗に直されていた。





家主「お召し物は、お直しさせて頂きました」




A「嗚呼、ありがとうございます」





襖の向こうからそう聞こえ、私は礼を述べた。




私は羽織に手を通す。


やっぱり、私にはまだ大きい。



でも、その大きさが私の使命と誇りである。





伊勢時「緊急連絡！伝言！」




A「！？」





その時、声が響いた。


伊勢時の声だ。

いつにも増して、緊張感を帯びている。





伊勢時「上限の参との戦いで、炎柱・煉獄杏寿郎が死亡！！


至急、集会を行う！！A、出席せよ！！！」




A「そんな……っ！！」





歯車は、狂い始めていた。

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