鬼の成り損ないは『可愛い子』がお好き！

かわいい３１ ページ31

少女「『禰豆子は強靭な精神力で、

人としての理性を保っています。


飢餓状態であっても人を食わず、

そのまま二年以上の歳月が経過致しました。



俄には信じ難い状況ですが、紛れもない事実です。




もしも、禰豆子が人に襲いかかった場合は、

竈門炭治郎及び……



鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します』」




その手紙には……炭治郎君への信頼が込められていた。


これが、炭治郎君が築き上げてきた信頼関係なのか。



血の繋がりの無い赤の他人のために、

己の腹を切る覚悟を捧げることができるほど。



凄いな、炭治郎君は。




私は炭治郎君をちらりと見る。


炭治郎君は……大きな瞳から涙を零していた。





不死川「切腹するからなんだと言うのか。


死にたいなら勝手に死に腐れよ。

何の保証にもなりはしません」




？「不死川の言う通りです！

人を食い殺せば、取り返しがつかない！


殺された人は戻らない！」





不死川と一人の男がそう声をあげた。



こいつらは……なんもわかっちゃいない。


鬼殺隊にいた鬼を狩る側が、

鬼のためにその命を捧げてるんだぞ？



その覚悟の重さが私には痛いほど伝わってきた。





A「足りないおつむだね。

人の覚悟すら図れぬ可哀想なお心をお持ちのようで」




不死川「あぁ！？調子に乗るなよ、鬼の分際で！」





不死川が私に吠える。


なーにが、『鬼の分際で』だ。



私は鬼の成り損ないだから、鬼ではないし、

それをいってしまえば『人間の分際で』とも私は言えますー。



私は嘲笑うかのように不死川を見てやった。





お館様「確かにそうだね。

人を襲わないという保証ができない、証明できない。



ただ。


人を襲うということも証明できない」




不死川「！！」





この人が一番偉く、そしてこいつらに尊敬される意味がだんだんわかってきた。



この人は……凄い。

かわいい３２→←かわいい３０

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す