2章 ページ4
「追え、逃がすなァアア!!」
あの日、私はとある宇宙海賊の一派から逃げていた。
確か春雨、とかいったか。
奴らは銀河系最大のネットワークを持つ犯罪シンジケートとのことで、膨大な数の天人が所属している。
私を追っていたのはそんな春雨の末端組織の連中で、実力自体は大したことない者ばかりだったのだが、如何せん数が多かった。
戦闘能力に優れた一族であっても、あまりに数が多すぎるとどうしても対峙する際隙が生じてしまう。
どうにか追手は全員始末したものの、私自身も浅からぬ傷を負ってしまった。
しかもご丁寧に武器に毒を塗るというおまけ付きだ。
翠狼族は狼化している状態であれば高い回復力を有するが、流石に毒を含んだ傷口は治りが格段に遅くなる。
さらなる追手を避けるために、そんな状態で全力で逃げたものだから毒の周りも早く、私が力尽きるのにそう時間はかからなかった。
限界の体を引きずり、どうにか人気の無い森の中へと逃げ込んだところで、私の足は力を失った。
未だに塞がらない傷口から、ダラダラと血が流れ落ちていく。
あぁ、これは少々まずいか。
まさかこんなあっさり死ぬ羽目になろうとは夢にも思わなかった。
幸いなのは、既に痛みという感覚が麻痺していることだろう。
これならば、然程苦しむことなく逝けるかもしれない。
ぼんやりとした頭でそんなことを考えていた時だった。
「でけェ犬が走り回ってるって通報受けて来てみりゃ…また随分ひっでー有り様で」
サクサクと聞こえてきた軽い足音に、チラリと視線を向ける。
そこには栗色の髪に赤い瞳を持った一人の男が立っていた。
よく見ればそいつが人間で、春雨とは全くの無関係であることがわかりそうなものだが…この時の私にはそんな余裕などある筈もなく。
「グルルルル……」
動かぬ体でできるせめてもの抵抗として、低く唸りを上げる。
だが既にそんな体力などは残っておらず、すぐに首を垂れた。
喉の奥から湧き上がってきた血をゴホリと吐き出す。
「躾のなってねェ犬っころだなてめー。だが、んな体でまだ威嚇してくるたァ大した根性じゃねーか。死にかけなのが勿体ねェくらいでさァ」
足音が近づいてくるが、それに対してできることは何も無く。
抗いようのない眠気に身を委ね、そのまま瞳を閉じた。
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影咲 遥(プロフ) - 夜空 星月さん» 星月様、初めまして!コメントを頂きありがとうございます。多分シャボン玉よりもグダる可能性大ですが、頑張って更新していきますね!応援ありがとうございました。 (2018年1月27日 22時) (レス) id: 6088c20e27 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 星月(プロフ) - 【シャボン玉に乗せた恋心】のときからファンです!こちらの作品も応援してます!頑張ってください!! (2018年1月27日 22時) (レス) id: 5d15086cca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:影咲 遥 | 作成日時:2018年1月27日 21時