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そいつは何度も刀振って、大蜘蛛の体をバラバラになるまで斬り刻んだ。
原型はある程度留めちゃいるが、動かなくなったとこ見ると絶命したんだろう。
刀を振って血飛沫を払い、そいつは俺の方に向かって歩いてきた。
袴姿で長ェ髪を1つに束ねて後ろで結ってる、身長は高めだし暗くて顔ははっきり見えねェが、雰囲気からして多分女。
手に持ってんのは刀身だけで既に普通の刀くれェの長さはありそうな、でけェ刀。
何だってあんな使いにくそうなモン持ってんだか。
いや、そもそも廃刀令のご時世にそんなん持ってる方がおかしいけど。
んなことをあれこれ考えてるうちに、女が刀を抜き身のまま持って近づいてきた。
刀の間合いに入ったと同時に、女は刀を振る。
防ごうにもこっちは身動き1つ取れやしねェから、何の抵抗もできなかった。
だがぶった斬られたのは俺じゃなく、俺を縛ってた糸の方で。
多少ベタベタは残っちゃいるが、俺の体は無事自由を取り戻した。
沖「ふー…助かりやした。とりあえず礼言っときまさァ、ありがとうございやす」
『いやいや、私は私の仕事をしたまでだよ。怪我はしていないかい?』
沖「糸以外は掠りもしなかったんで。傷1つ付いてやせん」
『それは良かった。流石はお侍さん、強いんだねぇ…』
聞こえてきたのはやはり女のそれ。
しかしこの緩くて掴みどころのねェ感じの声、どこかで聞いたことがあるような…
沖「……!アンタ、もしかして…Aさん、ですかィ?」
昔っから大人びた感じの声色してたAさん。
この女の声はAさんのそれとそっくりだった。
人違いかもしれねェ、けどもしそうだとしたら。
『あれま、もしかしてどこかで会ったことある人なのかな?気付かなくてゴメンね、確かに私の名はAだよ。朝霧 A』
雲が風に吹かれて流れ、月が顔を出す。
月明かりに照らされて見えたその人の顔には、幾分か大人びてはいたものの、昔の面影も残っていて。
緩く笑ったその顔は、俺の記憶の中にあるAさん。
その人に間違いなかった。
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影咲 遥(プロフ) - 愛音さん» 返信したコメが消えるという謎減少…申し訳ないので、もう一度お返ししますね。面白いと言ってくださってありがとうございます!これからも更新を頑張っていきますので、また読んでやってください。コメントありがとうございました! (2018年1月27日 20時) (レス) id: 6088c20e27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:影咲 遥 | 作成日時:2017年8月30日 1時