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見覚えがあると感じた死体の傷口、あれはそん時に見た男の死体のそれだ。
こうしてあの時のことを思い出して、はっきりわかった。
沖「あの時、Aさんが俺に何かしてたんですねィ…」
『忘れてしまえば、あれ以上総くんが巻き込まれることは無いと思ったからねぇ…本当は、私と一緒に居たっていう記憶全部を消してしまえればもっと良かったんだけど…そこまでの力は、私には無くてね。ゴメンね、かえって総くんを苦しめることになってしまって…』
Aさんの記憶を丸々全部無かったことにされるなんざ冗談じゃねェ。
寧ろ俺にとっちゃ、そこは感謝すべきとこだ。
良かった、Aのこと忘れずに済んで。
沖「Aさんのこと忘れることの方がずっと苦しいと思いまさァ。俺、昔っからアンタのこと大好きだったんですからねィ…」
『それは嬉しいなぁ…私みたいなのを好いてくれていたなんてさ。今抱き付かれているのも、それでだったりするのかな?』
俺の気持ちをわかってんのかどうなのか、飄々と笑いながらそんなことを言ってくるAさん。
そこでやっと、俺がAさんに抱き付きっぱなしなのに気付いて急いで離れる。
思わず顔が赤くなった。
沖「すいやせん、いきなり抱き付いたりして…」
『いやいや、別に構わないよ別に。"人"に好いてもらえるというのは貴重だし、嬉しいモノだよ。仕事柄、人間と関わることは少なくてねぇ…』
沖「Aさん、アンタどんな仕事してんですかィ…」
『こんなのを相手にする仕事…かな?』
転がったでけェ蜘蛛の死体を指差しながらクスリと笑ったAさん。
いや、ますますわかんねェ。
こんなのいっつも相手にしなきゃなんねェって、マジでどんな仕事でィ。
『しかし、参ったなぁ…まさか総くんが居るとは。もう彼らとは関わらせたくなかったんだけどねぇ…』
Aさんは僅かに困り顔をしながら自身の頭を掻いた。
あ、これまた記憶消されるパターンか?
折角思い出せたのに、また忘れさせられるなんざ冗談じゃねェ。
沖「…今回は記憶消したりしやせんよねィ?そのでっけェ蜘蛛、俺の仕事にも絡むんで…消されたら困るんですけど」
『マジでか。参ったなぁ…
相変わらずのゆるゆるな口調のまま、Aさんはガックリと肩を落とした。
やっぱ記憶消すつもりだったのか。
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影咲 遥(プロフ) - 愛音さん» 返信したコメが消えるという謎減少…申し訳ないので、もう一度お返ししますね。面白いと言ってくださってありがとうございます!これからも更新を頑張っていきますので、また読んでやってください。コメントありがとうございました! (2018年1月27日 20時) (レス) id: 6088c20e27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:影咲 遥 | 作成日時:2017年8月30日 1時