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あたたかい、ような、つめたい、ような
微かに、頬と唇に感じた温もりを辿っていけば、深く沈んでいた意識が浮上した。
最初に目に入ったのは網膜を焼くような強い光で、それを遮るように見える黒い何か。だんだん定まってきた視界と、動き出した思考回路が答えを出すより早く、声が降ってきた。
「起きたか」
かみや、の声。
その声に意識は一気に覚醒して目を瞬けば、目の前では神谷が頬杖をつきながら見下ろしていた。
「な、んで……」
神谷がここに、と思ったが、自分が随分長いこと寝たような感覚があることに気付く。
「い、今何時!?」
「18時42分」
「えっもうそんな!?」
頭を抱えた。覚えている。覚えているのだ。
原稿は結局ギリギリで、締切と一分一秒を争う戦いになったのだ。それでも無事に間に合い、提出し、確認の電話を受け取ったことは覚えている。しかしそこからの記憶が無い。おそらく脱稿できて安心したのか気が抜けたのだろう。徹夜をしていた体は限界で、そのままリビングのソファで寝たのだ。
「締切は間に合ったのか?」
「……間に合いました」
「そうか」
「というか、今日は早かったんだ」
「ああ、まあな」
神谷の格好はスーツではなく部屋着で、彼がとっくに帰宅していたことを知る。寝こけていたのが申し訳ない。
「ごめん、食事の準備とかしていればよかった……」
今から作ると時間がかかってしまうけど良いか?と神谷に尋ねれば、神谷は薄く笑った。そして不意に手を伸ばして、私の頬を摘む。
「え、え……?」
痛いような、痛くないような。くいくい引っ張られるがまま着いていけば、ダイニングテーブルには食事が並んでいた。
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美桜(プロフ) - 続きがとても楽しみです!^^* (2023年1月26日 11時) (レス) @page16 id: 3c71fa7893 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 12話に誤字がありました。「操作資料」ではなく、「捜査資料」です。 (2019年9月22日 22時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:依香 | 作成日時:2019年9月15日 3時